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【小説】RPてっかまき物語〜占いの館と精霊像〜

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まえがき

みなさんこんにちは。

てっかまきです。

RPてっかまき物語の第6話を書き上げました。

占いの館がオープンしたところなのでそれに関した物語です。

1ヶ月ぐらい経ってるけど遅筆なので勘弁してくだされ。

そして第4話で出てきた占い師ソフィが再登場します。

どんな活躍を見せてくれるんでしょうか。

文字数は1万文字です。読むのに15分ぐらいだと思います。

RPてっかまき物語はハーメルンにも掲載しています。縦書きでも読めるので、横書きが読みにくいという人はどうぞ。まだ第3話までしか上げてませんが、追って全部上げる予定ですのでお楽しみに。

ではでは、ご覧ください。どうぞ。

RPてっかまき物語〜占いの館と精霊像〜

「てっかまきさん。このテーブル、そちらに置いて」
「はいはーい」
てっかまきは言われたとおり、一人用の小さなテーブルを運んだ。
ここは占いの館。オルフェアの裏通りに新しくオープンする店である。
「あとはそうね。このタペストリーをそこの壁に」
「了解でーす。あ、ユノさん椅子借りていいですか」
「いいわよ」
ユノとはこの館の主人である。人間の女性。全身を紫色の占い師の服に身を包み、顔はマスクで覆われている。だがかなり若いということはわかる。20代の前半ぐらいであろうか。
「よし、あらかた準備は終わったわね」
ユノは部屋を見回してため息をついた。
「じゃあ、これバイト代ね」
「へへ、まいどあり」
ユノはてっかまきに100ゴールドを手渡した。
「働き者の何でも屋さんに来てもらって助かったわ」
「あ、はは、いちおう傭兵なんですけどね私」
そのとき入り口のドアがギイと開いた。ユノとてっかまきは思わずドアの方へ振り返る。見ると1人のプクリポが立っていた。女性。プクリポなので年齢は判別しにくいがおそらく若い。10代である。何の変哲もない服装をした一見ただの町人しか見えないそのプクリポは、まごまごして何も言わない。
「何かご用かしら?」
ユノがプクリポに話しかけると、そのプクリポはおずおずと口を開いた。
「あ、あ、あの……、私を弟子にしていただけないでしょうか」
ユノとてっかまきは顔を見合わせる。
「ごめんなさい、この館はまだオープンしてないの。オープンしてから改めて来てちょうだ……」
「お願いします! どうしてもユノ様の一番弟子になりたいんです!」
「そう言われても……」
ユノは後ろ頭をポリポリとかいた。
「なんでユノさんのことを知ってるの?」
てっかまきは不思議そうにプクリポに尋ねた。しかし、プクリポはまごまごするだけで何も言わない。
ユノはしばらくそのプクリポをじっと見つめていたが、やがて口を開いた。
「あなた名前は?」
「ポポカといいます」
「じゃあ、ポポカ。詳しい話はこちらで聞くからそこにお座んなさいな。……てっかまきさん、もう帰ってよろしいわよ」
「は、はあ、どうもありがとうございました」
てっかまきは首をかしげながら占いの館をあとにした。

※※※※※※

「ぷはぁ~! 美味い!」
てっかまきはエールに舌鼓をうっていた。占いの館を出たあと、その足で酒場に来たのである。時刻はちょうど夕時にさしかかるころ。一杯やるには頃合いであった。
「マスター、豚バラの網焼き1皿ちょうだい」
「ほい、豚バラね。おーい! 豚バラ一丁だ!」
程なくして豚バラ肉を炭火で焼いたものが運ばれてくる。てっかまきがそれを1口食べると口の中に甘い脂の香りが充満した。程なくして香ばしい香りに肉の旨味が後を追ってくる。そこにすかさずキンキンに冷えたエール。
「かぁ~! たまらん!」
てっかまきは腹の底から豚バラとエールの黄金の組み合わせに舌鼓をうった。
(やっぱりオルフェアに来たら豚を食べなければ)
オルフェアはトンブレロの一大生息地である。天然の良質な豚が豊富に捕れる。アストルティア全土を旅してるてっかまきにとって、各地方の名物料理を食べることは唯一の楽しみであった。
「マスター、今度はトンカツ1つちょうだい」
「ほい、トンカツね。おーい、トンカツ1つだ!」
その後、てっかまきがサクサクのトンカツに舌鼓を打っていると――。
「あ、あの!」
呼び止められた。てっかまきが声のする方向に振り向くと、先ほどのプクリポ、ポポカが立っている。
「あ?」
「……あの、オーガのお姉さん」
「な、なによ」
「あの……、私と一緒にバブルスライムを退治に行ってくれないでしょうか?」
「は? バブルスライム?」
てっかまきは持っていたジョッキをカウンターに置いた。
「はい……、あのあと、弟子入りしたければバブルスライムを倒してきらめきインクを手に入れてくるようにと言われて」
「インク?」
「はい……、タロットの絵柄を描くのにそれが必要とかで」
「それを私に手伝えと?」
「は、はい」
「冗談でしょ。何で私がそんなことしなきゃいけないわけ?」
てっかまきはトンカツを一切れバクリと口に運んだ。
「お金ならあります! 私の貯金全部! 400ゴールド!」
それを聞いたてっかまきはエールをぶふっと吹き出した。確かにバブルスライムを倒すだけで400Gというのはかなり割のいい依頼である。
「うーん、まあそれだけ出してくれるなら受けてあげてもいいけど」
「本当ですか!?」
てっかまきは黙って考えている。
(たぶんきらめきインクが必要というのはウソで、この子を体よく追い返すための口実なんだろうけど……)
ポポカを見ると涙目でてっかまきの顔をじっと見つめている。
(まあいいや。ユノさんとの契約はもう終わったし。知ったこっちゃねえや)
「……わかったわよ。受けるよ」
「あ、ありがとうございます!」
「今日はもう遅いから家に帰りなさい。明日の朝、東口で待ってるから」
「はい、では失礼します」
酒場から出て行くポポカを見届けたあと、てっかまきはとんかつを1切れ頬張った。

※※※※※※

翌日、てっかまきとポポカは馬に乗ってオルフェア東地方を歩いていた。バブルスライムの生息地帯はオルフェア東地方の東の部分にあり、歩いて行くと3日はかかる。そこで馬屋で馬を借りて進んでいるのである。
てっかまきが鞍に乗って手綱を引き、ポポカはその前にちょこんと座っている。のどかなオルフェア地方の緑の中をパッカパッカという馬の足音とともに2人はバブルスライム目指して進んでいた。
「そういやさ」
「はい」
「あんたって何でユノさんの弟子になりたいわけ?」
その質問にポポカはすこしうつむき、黙った。
「言えないような理由?」
「いえ……、私、昔ユノ様に助けられたことがあって」
「助けられた?」
「はい。私実は両親が2人とも居なくて。伯父さんの家に居候してるんです。でも、伯父さんたちは明らかに私を煙たがっていて。家に居場所が無い状態で。そんなときに伯父さんの大事な指輪を失くしちゃって」
「指輪?」
「はい。きれいだなと思って伯父さんがいない間にはめて遊んでたら寝ちゃって。起きたときには指輪は無く……。伯父さんが帰ってきてからものすごく怒られました。出て行けって言われて。でも、ちょうどそのとき通りかかったユノ様が、家に入ってきたんです」
「ユノさんが?」
「はい。それで軽くタロットで占って、『指輪はメイドが持ってる』って。伯父さんがメイドを問い詰めてみたら本当に持ってたんです。私が寝てる隙に盗んで私に罪を着せようとしたみたいで。結局メイドは逮捕され、私は家を出て行かずにすみました。それ以来、私決めたんです。ユノ様みたいな立派な占い師になるって」
「なるほどねぇ。ま、私は400ゴールドもらえるならなんでもいいんだけど」
てっかまきがクスッと笑うとポポカもケラケラと笑った。
その後、バブルスライム生息地帯には夕方ごろにたどり着いた。数匹も倒すと簡単にきらめきインクは手に入った。その日はもう遅いのでその場で野宿することにし、翌朝、2人は帰路についた。

※※※※※※

「ええっ! 本当にきらめきインク持ってきたの!?」
ユノは飛び上がらんばかりに驚いた。
「はい。こちらのてっかまきさんに手伝ってもらって……」
ユノがてっかまきをジロリと睨んだ。
「あ、はは、依頼は断らない主義でして……」
明らかにウソである。安い依頼やしんどい依頼は断っている。
「あら。じゃあ私もお仕事をお願いしようかしら」
「はい。どんなご依頼で?」
「1ヶ月後にこの館がオープンだからしばらくのあいだお手伝いをお願いしたいの」
「報酬はおいくらほどでしょう?」
「1日1ゴールド」
「はぁ!?」
「依頼は断らないんでしょう?」
てっかまきは何も言えず苦虫を噛み潰したように顔をしかめる。ユノはフフンと笑った。
「じゃあ、ポポカ。さっそくだけど、まずタロットカードの意味を教えるからこっち来て」
「弟子入りさせてくれるんですか?」
「約束だし。許可するわよ」
「あ、ありがとうございます!」
そのとき、入口の扉がギィと開いた。3人は思わずそちらを振り返る。立っていたのは見覚えのある人物であった。
紫のローブを身につけたエルフの女性。神秘的な雰囲気。年齢は30代の前半ほど。
「ソフィさん!」
ソフィとは以前てっかまきが世話になった占い師である(第4話参照)。アズランを拠点とし、それ以来てっかまきとはたまに酒を酌み交わす仲であった。
「姉さん」
「姉さん!?」
てっかまきは驚きのけぞる。ユノがソフィを姉と呼んでいるのだ。
「ああ、姉さんと言っても実の姉妹ではありません。あたりまえですけど。姉さんは私が修行してたころの姉弟子なんです」
説明するユノにソフィはツカツカと歩み寄る。
「あなた何考えてるの?」
「なにがです?」
「占い師たちに戦闘技術を教えるそうじゃない」
「それが何か?」
「占い師の本分は人を占うこと。そして運命に立ち向かう術を共に考えること。それを忘れたの?」
ユノはフフンと鼻で笑う。
「何時代遅れのこと言ってるんですか。全世界の占い師たちがいまどんな状態にあるかご存じないんですか?」
ソフィは何も言わない。
「占いなんて所詮は迷信なんですよ。ドルワームの科学思想が普及した今、迷信じみた占いなんて誰も見向きもしません。占い師たちは仕事がなくて路頭に迷ってます。戦闘技術を教えて冒険者として仕事ができるようになれば、占い師たちも食いっぱぐれなくて済む」
ソフィはしばらく訝しげにユノの顔を睨んでいたが、やがて何も言わずに入り口から出て行った。
「あっ、ちょっとソフィさん!」
てっかまきはソフィを追って入り口から飛び出した。

※※※※※※

「ユノさんを止めるためにアズランからわざわざこちらへ?」
「ええ」
てっかまきとソフィは酒場で飲んでいる。
「占い師に戦闘技術を教えることがそんなに悪いことなんですか?」
「占いは占い師にしかできない。占い師が戦闘技術によって稼ぐことになれば、世界から占いが絶滅してしまう。占いによって救われる人も救われなくなるんですよ」
てっかまきは後ろ頭をポリポリとかいた。
「なんでユノさんは戦闘技術にこだわるんでしょう」
「私とあの子は同じ師匠について修行していたんだけど、私とあの子以外の弟子は全員死んでるのよね。師匠も含めて」
「死んだ? なぜ?」
「私達が修行していた占いの館が魔物に襲われたの。単なる占い師の私たちは魔物に相対する手段なんかもたず、一方的にやられた。ちょうど通りがかった冒険者が助けてくれたんだけど、私とユノ以外はすでに……。あの子はそれ以来自分を悔いていた。自分に魔物を倒せる力があればみんなは死なずに済んだってね。それ以来、占い師としての戦闘技術の研究を始めたみたい」
「そうだったんですか……」
てっかまきはタンブラーの中でゆらゆらと揺れる蒸留酒を見つめた。
ソフィは懐からタロットカードのデッキを取り出すと、軽くシャッフルしてパッと1枚引いた。出たのは塔のカードである。
「……これからあの子には大きな災いが訪れる。てっかまきさん、どうかあの子を助けてやってくれませんか?」
「え、ええ、そりゃもうソフィさんの頼みならいくらでも」
「どうかあの子をよろしくおねがいします」

※※※※※※

――1ヶ月後。
「はい、押さないでくださーい! こらっ! そこ割り込まないの!」
占いの館オープンの日。入り口には長い行列ができていた。ユノの目論見通り、食うに困った占い師たちや、新しい戦闘技術に興味を示した冒険者たちでごった返しているのである。
「おい、姉ちゃーん。いつまで待たせんだよ」
「順番ですから落ち着いて」
てっかまきは行列の整理をしていた。ユノの依頼通り、日給1ゴールドである。しかしソフィの頼みでもあるので、特に嫌な感じはしていなかった。
「ユノさん、どんどん増えてますよ。どうしますか?」
てっかまきは入り口から中に入り、ユノに尋ねる。
「これは予想外だったわね……。まあ嬉しい悲鳴だけど。とにかく占い師の転職クエストの受付だけ大急ぎで済ませてしまいましょう」
てっかまきとユノは大急ぎで全員分の受け付けを完了した。

――その夜遅く。
てっかまきは今日受け付けた名簿の整理をしていた。
「またよく集まったもんだなぁ……」
受け付けた人数は300人に達した。これからユノはこれだけの占い師の面倒を見るのである。
「お疲れ様でした、てっかまき様。お茶、ここに置いときます」
「ああ、ありがと」
ポポカは暖かいお茶をテーブルの上にそっと置いた。
「ユノさんは?」
「疲れて眠ってらっしゃいます」
「そう」
そのとき、入り口の扉がギイと開いた。2人が振り向くと1人の老紳士が立っている。プクリポ。年は60歳ぐらいであろうか。
「失礼。ここが占いの館だと聞いてきたのですが」
「すみません、今日はもうおしまいで。明日また来ていただけますか」
ポポカが説明するが老紳士は帰ろうとしない。
「急ぎで占いを1つお願いしたいのです。物を無くしてしまいましてな。それを見つけたくて」
ポポカが困ったようにてっかまきの顔を見る。
「ちょっと待ってて」
てっかまきはユノを起こすため寝室のドアを叩いた。返事は無い。そっとドアを開けてみるとユノがベッドの上で寝息を立てている。
「ユノさん、ちょっとユノさん」
てっかまきはユノを揺り動かした。
「う……ん、なに?」
「お客さんが来てるんですけど。占いの依頼で。物探ししてほしいって」
ユノは枕元に置いてあった水を一口飲むと面倒くさそうな顔をした。
「ポポカにやらせといて」
「え? いいんですか?」
「あの子は筋がいいから物探しぐらいならできるでしょ。まあ、ハズレても所詮占いだから」
てっかまきはユノの寝室から出ると、ポポカに事情を説明した。それを聞いたポポカの表情がパッと明るくなった。
「ではこちらへどうぞ」
ポポカは老紳士を占い用のテーブルに案内する。
「おかけください」
「こりゃどうも」
老紳士は杖をテーブルに立てかけるとイスに座った。
「物を無くしたということですが、一体何を?」
「うちの家宝の精霊像です。先日盗まれてしまいましてな。なんとしても取り戻さなければ」
「そんなに大事なものなんですか?」
「ええ、当家に代々伝わるものですので……」
「なるほど、わかりました。では、こちらのカードから1枚選んでいただけますか?」
てっかまきはその様子を見ながら書類の整理を続けた。

※※※※※※

――1週間後。
占いの館ブームは一段落し、新規の希望者も下火になってきた。それでも占い師の新規希望者が1日に10人ほど、クエストを終えて試験に合格したものが5人ほど来る。
「ようやく、この館も平常運転で軌道に乗り始めたわね」
ユノはニコリと笑った。
「てっかまきさん、ありがとう。もう依頼は終わりでよろしいわよ」
「え!」
「ん?」
「い、いえ……」
てっかまきはソフィが言った災いからユノを守らないといけないのである。だが、ユノは「タダ働きが終わったのに喜んでない」ことを不思議に思うかのような顔でてっかまきを見つめている。
「……で、ではこれで失礼します」
「ええ、ありがとう」
そのとき、地を割くような轟音とともに地面がズシーンと揺れた。てっかまきとユノは目を丸くして顔を見合わせる。
「い、いったい何の音でしょう?」
ポポカは怯えている。
「あなたはここにいなさいポポカ。てっかまきさん!」
「ええ、行きましょう」
2人は館を飛び出し、裏通りを走り始めた。そのとき、またズドーンという轟音と共に地響きがする。音は町の広場から聞こえるように思われた。2人は町の広場へ急いだ。

数分後――。広場に着いた2人が見たのは驚くべき光景だった。
巨大な犬のような魔物が町を襲っているのだ。黒い3本のツノに赤いたてがみ、鋭く禍々しい牙。足には鋭い爪を持っている。
「グアァアアアアァア!!」
魔物が耳がつんざくような巨大な咆哮をあげ、口から巨大な火球を吐き出した。その火球はすさまじい速度で広場のそばにあった郵便局に直撃し、粉々に粉砕した。悲鳴をあげて逃げ惑うプクリポたち。魔物はそのプクリポたちを喰らい、蹂躙した。
てっかまきは背中に背負った剣に手をかける。ユノも懐からタロットを取り出した。そのとき、魔物が2人に気づく。
「おや」
地の底まで響くかのような暗く重い声で魔物は話し始めた。
「占いの館のオーガか。とするとそちらは寝ていた主人かな?」
「なぜ私たちのことを」
「お宅のお嬢さんは非常に役立ったよ。精霊像を探し当ててくれた」
「ポポカが!?」
「……精霊像とお前に何の関係がある?」
「あれは私の力を封印した物だ。プクリポの姿にされて以来、ずっと探し求めていた」
ユノは苦々しい顔をする。
「せめてもの礼に2人とも一思いに殺してやろう」
そう言った刹那に魔物は口から火球を放った。2人は飛びのいて火球をかわしたが、すさまじい轟音を立てて後ろにあった家が粉々になった。
「ユノさん! 後ろから援護を」
「わかったわ!」
てっかまきは背負ったはがねの大剣を抜き、脇構えにかまえながら魔物に向かって突進した。
「グアァアアアアァア!」
魔物のほうもけたたましく咆哮しながらてっかまきに突進してくる。広場の真ん中で両者は衝突した。
結果――。
てっかまきが大きくはじきとばされた。地面をズザザと滑りながら体勢を整えるてっかまき。
「ちっ」
てっかまきは今度は空高く飛び上がり、脳天に向かって剣を打ち下ろした。しかし、大剣が直撃する寸前に魔物がけたたましい雄叫びをあげ、てっかまきは吹き飛ばされた。
「くそ」
「大アルカナ正義!」
次の瞬間、ユノの掲げたカードから光の矢が飛んだ。しかし、またもや魔物の咆哮の前にかき消されてしまった。
「全然効かない……」
「ユノさん。強化はできる?」
「はい。できます」
「お願い」
「はい」
次の瞬間、またてっかまきが魔物に向かって突進した。
「大アルカナ力!」
てっかまきの体に力がみなぎる。
「グアァアアアアァア!」
はがねの大剣とけたたましい雄叫びが衝突した。
「くうう!」
「グルルルル!」
2つの闘気がバチバチと火花を散らす。鍔迫り合いのような形になった。形勢はてっかまきがやや劣勢。ズリズリと後ろに押されている。
そこにすかさずユノが大アルカナ隠者のカードを放つ。闇の力が魔物を襲った。
しかし――。
魔物は視認できないほど素早い動きでユノの術をかわすと、後ろからてっかまきの背中を引き裂いた。
「がっ!」
間髪入れずに口から火球を放ち、てっかまきに命中させる。てっかまきは勢い良く吹き飛び、広場の隅にあった家に激突した。てっかまきが衝突したことで家は粉々になった。
「う……うう」
瓦礫の下から這って出てくるてっかまき。しかし、もう戦闘は不可能なほどダメージを負っている。
「てっかまきさん! ……回復を!」
ユノがてっかまきに走り寄ろうとするも、魔物によって目の前を塞がれてしまう。
「大アルカナ太陽!」
魔物の頭上から巨大な光球が落ちる。しかし、魔物は光球が落ちる前に稲妻の如き速さでユノに突進し、その長い角でユノの胴を貫いた。がっくりと崩れ落ちるユノ。口から鉄臭い液体が出てきて、地面に赤い模様を作った。
「うう……ユノさん」
てっかまきは這ってユノに近づこうとしている。と、そのとき、広場の入口にいる1人の人物が目に止まった。
「ソフィさん!」
魔物はその声でソフィに気づき、またもやすさまじい速さで突進する。
「グアァアアアアァア!」
「危ない! 逃げろ!」
ソフィはやれやれといった表情で懐からデッキを取り出すと軽くシャッフルして1枚カードを引き、天に掲げた。すると、耳をつんざくような轟音とともに巨大で鋭い雷光が魔物を貫いた。
するとあれほど頑強で巨大だった魔物が一撃のもとに叩き伏せられ、けたたましい断末魔の声をあげて動かなくなった。
「ね……姉さん……?」
ソフィは無表情で動かなくなった魔物をみつめている。やがて魔物は黒い霧となって霧散した。ソフィはそれを見届けると血まみれでぐったりしている2人のもとへ歩み寄る。そしてデッキを軽くシャッフルすると1枚のカードを引き、天に掲げた。すると、2人の体を暖かい緑色の光が包んだ。
「痛みがなくなっていく……」
2人の傷はみるみるうちに塞がった。そして体力も完全に回復した。ソフィのことを半ば化け物でも見るかのような表情でゆっくりと立ち上がる2人。
「姉さん……、その戦闘術はどこで……?」
そう言い終わるか終わらないかのうちに、パンという乾いた音と、頬の痛みと衝撃でユノはギョッとした。ソフィはユノの頬を平手で叩いた。
「姉さん?」
「なんで入門して1ヶ月の新人に1人で占いをさせたの!」
ユノは頬を押さえたまま呆然として何も言わない。
「あなたが傍らについていれば、あれが魔物だということは見抜けたはず」
ユノは何も言わない。
「占いは占った相手やその周囲の運命を左右するということを自覚しなさい!」
ソフィはそう言うなりツカツカとその場を立ち去ってしまった。あとには呆然とソフィの後ろ姿を見つめる2人が残った。

※※※※※※

「私は何もかも間違っていたんですね。姉さんの言うとおり」
ユノとてっかまきは酒場でエールを飲みながら話していた。ソフィが魔物を倒したあと、2人でけが人の救助を行い、ちょうど一段落したところである。
「占い師である私が、いちばん占いを軽んじていた」
ユノはジョッキの中でピチピチと弾けるエールの泡を見ながら力なく笑った。てっかまきはグビリとエールを一口飲む。
「ソフィさんはどこで戦闘術を身に着けたんだろう」
宙を見つめながら誰ともなく尋ねる。
「たぶん……、一旦は私と同じことを考えたんだと思います」
「占い師を戦闘職にって?」
「ええ……。でも姉さんは道を踏み外さなかった」
「うーん」
てっかまきは腕組みをした。
「でもせっかく開発した戦闘術を封印するのはもったいない気がするんだけど」
「ええ……、冒険者さんたちに占い師の戦闘術を教えることは続けようと思います。合わせて我々占い師の活用の仕方も教えていこうかと」
「占い師の活用の仕方?」
「ええ、占いは冒険者さんたちが冒険をする上で、きっと役に立つと思うんです」
「そりゃ確かにね。私もソフィさんに世話になってるし」
「冒険者さんに我々占い師を利用することが広まっていってもらえれば、占い師たちの困窮も無くなるかと」
てっかまきはフーと溜息をつき、目をつぶった。
「……もうしわけなかったです」
「え?」
てっかまきが急に謝ったのでユノは若干面食らった。
「ソフィさんから頼まれてたんです。あなたを守るように」
「魔物のこと?」
「わからないけど、災いが訪れるから守ってやってくれって。でも、全然役に立たずに」
「……あの魔物は強すぎましたよ」
ユノはクスッと笑った。
「なんで魔物と戦ってるときにソフィさんは来たんだろう?」
「たぶん嫌な予感がしたんだと思います。そういう人です。あの人は」
ユノは嬉しそうに笑った。
「占いの館も再オープンかぁ」
「そうですね。そうだ、てっかまきさん、お仕事を依頼したいんですけど」
「どんな仕事です?」
「再オープンまでまたお手伝いしていただけませんか?」
「べ、別にかまいませんけど、今度はまともな金額でお願いしますよ」
「ええ」
ユノは屈託なく笑った。

この2週間後に占いの館は再オープンし、多くの冒険者へ占い師の戦闘術を教える館へとなった。

てっかまきの旅はまだまだ続く――。

あとがき

はい、第6話、終わりました。いかがでしたでしょうか。

なんか回を追うごとにてっかまきが活躍しなくなってるような気がするんだけど気のせいかねw

今回とか一方的にやられただけだからね。

もういっぺん第2話みたいな戦争もの書こうかなぁ。てか、2話と今のてっかまきを比べるとまるで別人だねw ほとんどギャグキャラみたいになってしまった……。

ところで、ユノがね、術を出すたびに「大アルカナ◯◯!」って叫ぶのを不思議に思った人が中にはいるでしょう。

「ドラクエの占い師のカードには大アルカナしか無いのに」と。

あのね、この小説でのユノの術にはね、実は小アルカナもあります。めんどくさいから効果は考えてないけどね。

というわけで、「RPてっかまき物語〜占いの館と精霊像〜」これで終わりです。

みなさま読んでくださってありがとうございました。

次回はたぶん数カ月後になると思います。お楽しみに。

ではでは。

See You!