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【小説】RPてっかまき物語~死霊との戦い~、第2部

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グレンは小国といえども1つの国である。その領土は広い。グレンから獅子門までの道のりは徒歩で一週間かかる。1000人の傭兵旅団とガートラントから来た援軍1500人、合計2500人の兵団はグレン東領を北に向かって行軍していた。グレン東領は草木1本生えない荒野である。暑い中、ずっと変わり映えのしない色気のない景色を見ているとそれだけで疲れる。一行は少しでも気を紛らわすため、他の隊員と会話しながら進んでいた。

「わたくしは12歳のときにドルワームへ留学したんですの。だから科学技術にも詳しいんですのよ」

「はあ……、そうですか」

ベルタはリリアンヌから自慢話ばかり聞かされ、うんざりしていた。余計に疲れるような気さえしてくる。

「あなたはどのようなお家で育ったんですの?」

「私の家はカミハルムイにある小さな道具屋です。ですが店の経営も上手くいってない状況でして、少しでもお金を稼ぐため私は魔法を猛勉強しました」

「あら、そう」

リリアンヌはベルタを哀れみの目で見る。

「この戦争が終わったらわたくしから資金を融通してあげてもよろしくってよ。あなたのお家をカミハルムイで一番大きなお店にしてあげるわ」

「は、はあ……」

リリアンヌとベルタの後ろにはケリーとフォルノーが続く。

「俺はリリアンヌとはあんまり絡まんようにするけん。あげん自慢話ばっかりするおなごは苦手ばい」

小声でケリーに耳打ちするフォルノー。

「ベルタがリリアンヌの係ドワ」

ケリーはニシシシと笑った。

ケリーとフォルノーの後ろにはてっかまきとレイガが続く。しかし、2人とも口を開かず、ずっと黙って歩いていた。

そのうち、てっかまきは一番後ろを歩いていたギューに声をかける。

「ねえ、ギュー」

「は、はい、何でしょう?」

てっかまきはピタリと立ち止まる。ギューも不思議そうな顔をしながら立ち止まる。ギューは自分たちを置いて前に進んでいく分隊とてっかまきの顔を交互に見て困惑した。てっかまきはじっと前を見たまま口を開く。

「……あんたモグリでしょ?」

明らかにうろたえるギュー。

「えっ、な、なんでですか?」

「戦歴1年で上級職の試験を突破できるとは思えない」

「いや、そんなことは……」

「じゃあ、師匠は誰よ?」

「それは……」

「……今、人手を失うのはまずいから黙認するけど、戦果を出せなかったら告発するから、そのつもりで」

てっかまきは再び歩き出した。ギューはしばらくうつむいていたが、やがてとぼとぼとてっかまきの後に続いた。

しばらく歩いたところで1人の伝令兵が一行に近寄ってくる。

「失礼します! 分隊長殿はどなたで?」

「私ですが?」

立ち止まって返事をするてっかまき。

「伝令です。ご査収ください」

伝令兵は小さな紙切れをてっかまきに渡し、一礼すると別の分隊の元へ駆けていった。てっかまきはしばらく伝令兵の後ろ姿を見つめていたが、やがて、紙切れに目を落とした後、クシャッと握りつぶした。てっかまきの表情を見て、一行はタダ事ではないと悟り、立ち止まる。

「……何があったのです?」

ベルタがてっかまきに問いかける。

「……死霊たちが南下を始めたわ。まっすぐグレンに向かってる。このまま行くと2日後にぶつかる。先に控えてる本隊に合流したあと戦闘を開始するそうよ」

隊員たちはそれなりのキャリアがあるだけあって冷静である。ギューを除いては。

「だ、大丈夫でしょうか。僕、魔物と戦うの初めてで……」

「大丈夫じゃなかったら死ぬだけだろ。傭兵なら自分でなんとかしろ」

レイガにたしなめられてしゅんとするギュー。一行は再び荒野を進み始めた。

*****

――2日後。

普段風の音以外に何もないグレンの荒野に、この日は轟音が響き渡っていた。剣と剣のぶつかる音。雄叫び、悲鳴。骨の潰れる音。それらが混ざり合って混沌とする戦場。

そう、ここは戦場である。103分隊含む傭兵・ガートラント兵団はグレン軍に合流した後、死霊の軍勢と戦っていた。

「前方の敵、一群まで躍進距離200! 突撃! 前へ!」

中隊長が突撃の号令をかける。いっせいに飛び出していく中隊。その中に103分隊も居た。

「レイガとフォルノーは前出て! ベルタは後ろから魔法! リリアンヌも近接武器に持ち替えて基本前! ただし、亡霊剣士が来たら下がって回復に徹して! ケリーは自由! 敵を引っ掻き回して! ギューは一番後ろ! いいわね!」

「了解!」

いっせいに指示通りの配置につく隊員たち。

一番先頭で突撃したのはレイガである。レイガは敵の群れに衝突するなり飛び蹴りをかまし、死の奴隷の頭蓋骨を木っ端微塵にした。別の死の奴隷が後ろから骨で殴りかかるも後ろ蹴りにより吹き飛ばされた。

フォルノーの武器は鋼のオノである。鉄の鎧に身を包み、死の奴隷と戦っていた。骨で殴りかかる死の奴隷にブンとオノを振り下ろすとクシャッと紙人形のように潰れる。そして振り向きざまに振り払うと別の死の奴隷の足が小枝のように切断された。

そのとき、後ろから死の奴隷2体と亡霊剣士1体がフォルノーに襲いかかった。フォルノーは振り向きざまに死の奴隷1体を粉砕する。もう一体が骨でフォルノーを殴りつけたが、骨のほうが砕け散り、その死の奴隷はオノで粉砕された。同時に亡霊剣士がフォルノーに剣を振り下ろす。しかし、その瞬間、後ろから飛んできたメラが直撃して亡霊剣士は体勢を崩した。撃ったのはベルタである。次の瞬間、レイガが背後から後ろ回し蹴りで亡霊剣士を吹き飛ばした。合わせてフォルノーがオノを振り下ろして亡霊剣士を仕留める。

リリアンヌは棍で死の奴隷と戦っている。その小さなもふもふとした体を器用に使って棍を死の奴隷に叩きつける。力が弱いので一撃では倒せない。しかし、棍の間合いが長いため死の奴隷はリリアンヌを攻撃できず、一方的にやられていた。そのうち、亡霊剣士がリリアンヌ目掛けてふわふわと寄ってきたので、リリアンヌは後ろに下がる。しかし、亡霊剣士は前衛には見向きもせず、リリアンヌを追ってきた。リリアンヌが追いつかれ、剣の間合いに入った瞬間、ケリーが亡霊剣士の後ろからマントを短剣で切り裂く。亡霊剣士は激昂してケリーを追い始めた。

「鬼さんこちらドワ~」

亡霊剣士はケリーによって前衛の元へ誘導され、レイガとフォルノーに倒された。

一方、ギューは狼狽えていた。初めて見る魔物。恐怖でガチガチと震えている。そのうち亡霊剣士がギューの背後からふわふわと寄ってきた。

「ひっ!」

とっさに振り向いて片手剣を構えるギュー。亡霊剣士は上段から勢い良く剣を振り下ろした。ギューは慌てて横に打ち払う。すると亡霊剣士は横薙ぎの攻撃に切り替えた。片手剣で受けるギュー。しかし、亡霊剣士は力ずくで押してギューの体勢を崩したあと、ギューのみぞおち目掛けて突きを繰り出した。

(やばい! 死ぬ!)

ギューはとっさに目をつぶった。しかし別段痛みもなんともない。恐る恐る目を開けると、両断された亡霊兵士と剣を振り下ろしたてっかまきが立っていた。

「隊長?」

てっかまきはギューに見向きもせず他の敵と戦い始めている。

「僕をサポートするために最後方に居てくれたんですか」

呆然と涙ぐんでてっかまきを見つめるギュー。

「余計なこと言ってないで戦いなさい」

てっかまきが亡霊剣士2体を同時に両断したそのとき、死霊たちの動きが変わり始めた。明らかに後退し始めている。

「……どうやら勝ったみたいね」

てっかまきは辺りを見回し叫んだ。

「103分隊! 全員生きてる!?」

「死んでしまいましたドワ~」

ケリーはおどけてニシシシと笑う。

「見たところ全員います隊長」

ベルタがてっかまきに駆け寄ってくる。

「よし、命令があるまでその場で待機! 気を抜かないでね!」

その後、程なくして本格的に死霊の群れは敗走し、グレン軍の勝利が確定した。

――その日の夜。

グレン軍は戦地からすこし北へ行った場所にて野営をしていた。103分隊も割り当てられたテント前で火を焚き、疲れた体を休めている。

「あの方こそ真の勇者です!」

ギューは目を爛々と輝かせながらベルタに詰め寄った。

「あの剣の腕! 的確な判断力! カリスマ性! そしてその美貌!」

ベルタはずっとギューからてっかまきが如何に素晴らしいかを混混と語られ、うんざりしていた。

「素晴らしいです! もうランガーオ村のマイユなどより遥かに上だと思いますね!」

「あの……、あんまりそんなこと大声で言わないほうが……。どこにマイラーがいるかわかりませんから」

「いいえ、言わせていただきます! 僕はこの戦争が終わったらあの方に弟子入りします! そして一生ついていきます! 僕はあの方の弟子になるために生まれてきたんだ!」

「はぁ、そうですか……」

「ベルタ。何をしてるんですの? わたくしの食器を早く片付けなさい」

食事を終わらせたリリアンヌがベルタに歩み寄ってくる。

「は、はい。すぐに」

ベルタはリリアンヌに促されて食器を片付け始めた。

少し離れたところでフォルノーとケリーがそれを眺めている。

「ベルタも大変ドワねぇ。リリアンヌにギューに」

「ややこしい奴にモテる体質っちゃろうね」

「全部引き受けてくれて助かるドワ。この隊でいちばん役立っているのはベルタドワ」

ケリーはニシシシと笑った。

「それより、今日の俺の戦いぶりどげんやった? カッコよかっちょろ?」

「見てなかったドワ」

――焚き火から少し離れたところにて。てっかまきは隊員たちを遠目に見ながら1人食事を取っていた。

(はぁ……、何回やっても隊長は疲れるわ)

そんなことを思いながらパンを頬張っていると、足音が近づいてくる。ふと目をやると、レイガであった。

「てっかまき」

「なに?」

「お前、ギューを告発するのか?」

てっかまきはパンをバクッと口に入れた。

「……まあ、戦果は無かったけど、逃げずに戦おうとはしかたから保留ってとこね」

パンを口に入れたまま、半ば何を言ってるかわからないような喋り方で答えるてっかまき。

「もし、逃げたらどうしてた?」

てっかまきはピタリと食事の手を止めた。そして、ゆっくりとレイガを見上げる。

「……殺すつもりだったんだろ?」

てっかまきはレイガの目を見たまま何も言わない。

「自分の分隊から敵前逃亡が出たら金に影響するからな」

てっかまきはしばらくレイガの目をじっと見つめていたが、やがてゆっくりと立ち上がった。

「……小隊長のとこ行ってくる」

遠ざかっていくてっかまきの背中を見ながらレイガは1人つぶやいた。

「あのときと何も変わってないのか……」

――2時間後、103分隊テント前。

レイガ以外の隊員たちが食事を済ませ、談笑している。

少し離れたところに座って食事をしているレイガに聞こえないように小声でケリーが言った。

「レイガはなんでいつも人と絡もうとしないドワ?」

「きっと気難しい方なのですわ。ほっとけば良くってよ」

「うーん、俺らには別に壁作ってない気がするっちゃね。どっちかっちゅうと隊長のことを嫌っちょるように見えるばい」

「なんで嫌うんですか! あんな素晴らしい人を!」

「俺に言われても知らんやん」

「あの2人は過去に何かあったんでしょうか?」

「戦地からここに来るまでの間にそれとなく隊長に聞いてみたドワ」

「なんち聞いたと?」

「『レイガのこと知ってるドワ?』って」

「そしたら?」

「この戦争で初めて会ったって言ってたドワ」

「謎ですね……」

そんなことを話しているとてっかまきが帰ってきた。全員「なにも話してませんよ」とばかりにお互いに視線をそらし、口を噤む。

「ちょっとみんな聞いて。レイガ! こっち来て!」

てっかまきの前に集合し、話を聞き始める隊員たち。

「いま旅団長に会ってきたわ」

「りょ、旅団長!?」

全員が驚愕する。ギューを除いて。

「すみません、旅団長って?」

「この戦争を一番上で仕切ってる人ドワ……」

「えっ、す、凄い! 隊長!」

目を輝かせててっかまきにすがりつかんばかりににじり寄るギュー。

「黙って聞きなさい。103分隊はこれからこの旅団を離脱する」

互いに顔を見合わせる隊員たち。

「離脱……って、どういうことでしょうか?」

「斥候からの報告によると死霊の群れは物凄い勢いで戦力を補充してるみたい。2日後には今日の損耗を補う勢いだって」

「どうやって補充してるんですの?」

「ランガーオ山地から次々と死霊が湧いてる。そこで私達が死霊の軍勢を迂回してランガーオ山地に居る供給源を叩く」

「そんな重要なことを傭兵にやらせるのか?」

「私たちが今日の戦闘で特に戦果が高かったからみたい。もう兵士とか傭兵とか言ってられないのよ」

「当然、金は増えるドワね?」

「ちゃんと任務完了すればね」

「やったドワ~!」

ケリーは小躍りして喜んでいる。

「ランガーオかぁ。寒いの苦手っちゃねぇ」

「だらしないですわね。わたくしなんかどんな寒さにもへこたれたことないですわ」

「それは毛皮を着てるからでは……」

「くだらないこと言ってないでさっさと寝なさい。明日から単独行動よ」

「了解~」

隊員たちは明日からの作戦に備え、早々に眠りについた。

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