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【小説】RPてっかまき物語~死霊との戦い~、第3部

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――4日後。ランガーオ山地。

一行は死霊たちに見つからないように迂回してランガーオ山地に入り、死霊の発生源を探していた。一面の銀世界であるが、吹雪が吹き荒れ、いたるところで雪崩が起きそうな気配がする。旅団から白く染色した装備が支給されたため、遠目からではわからない。てっかまきだけはいつものバニラ町人服であるが。白く染まった林の中を白い息を吐きながら一歩一歩あるいていく。

「隊長……、寒くないんですか?」

ベルタが半ばあきれたようにてっかまきに言う。

「寒いわよ」

「支給された防寒着ば着ればいいちゃなかですか」

「私はこれ以外着ないのよ」

隊員たちはお互いに顔を見合わせて首をかしげる。

「脳みそ筋肉のオーガでもオシャレの意識はあるんですのね」

「リリアンヌさん、なんてことを! 隊長は美的センスも一流です!」

「しっ、静かに! 全員伏せて!」

言われるがままに体勢を低くする隊員たち。見ると、林の奥で火が焚かれている。そして、火の周りをバイキングソウル1匹と腐った死体5匹がうろうろしている。

「あげな凶悪な魔物初めて見たばい」

「どうしましょう? 逃げますか?」

「しっ!」

てっかまきは他の隊員を黙らせて、じっと魔物たちを見ている。すると、林の奥から1人の男が姿を現し、魔物たちに近づき始めた。男は紫色の全身鎧に双剣を携えている。

「人間……?」

「なんで人間がこんなとこにいるドワ?」

「静かに!」

見ると魔物たちはその男の周りを囲んで指示を仰いでるように見える。

「全員、戦闘用意」

「戦うっちか? あげな魔物と?」

「やめたほうがいいですよ……」

「あの男は死霊の軍勢の鍵を握ってる」

「なんでわかるドワ?」

「……長年の勘よ」

「勘であげな魔物と戦うっちあんた」

「全員、戦闘用意。命令よ」

隊員たちは命令されたとおりに武器を構える。

「バイキングソウルは私とレイガでやるから、あとはあんたたちで仕留めて」

「了解」

「3数えたら突撃する。……1、2、3、突撃!」

隊員たちは号令とともに雄叫びをあげて突撃した。

てっかまきが先陣を切ってバイキングソウルに突撃する。てっかまきが袈裟懸けにバイキングソウルに斬りかかるとバイキングソウルは横に打ち払った。合わせてレイガが前蹴りを食らわせる。レイガは連続して回し蹴りをくりだし、バイキングソウルの頭に直撃させた。次の瞬間、てっかまきが横薙ぎに剣を振りぬくが、後ろに飛び退いてかわされてしまった。

2人はバイキングソウルと対峙するが、ほとんどダメージを与えられていないように見える。

次の瞬間、バイキングソウルは一瞬で間合いを詰め、横薙ぎにレイガの胴を斬り裂こうとした。その剣を真上から打ち落とすてっかまき。その隙をぬってレイガはバイキングソウルの懐に潜り込み、背負投げで地面に叩きつけた。間髪入れずに下段突きを顔面に叩き込む。

(よし、仕留めた!)

レイガとてっかまき、2人が同時にそう思った。しかし、次の瞬間――。

バイキングソウルはぴょんと飛び上がるとレイガに対して連続して斬りつけてきた。レイガはかわそうとしたが間に合わず、肩を斬られてしまった。

「……!」

傷口を押さえてガクッと膝をつくレイガ。次の瞬間、てっかまきが上空高く飛び上がり、後ろからバイキングソウルの脳天に一撃を加えた。昏倒するバイキングソウル。

「いまのうちよ。レイガ来なさい!」

レイガは顔を上げててっかまきを見た。てっかまきが奇妙な構えをしている。横薙ぎに攻撃する構えであるが、剣の腹を前にして構えている。レイガはしばらく考えていたが、やがて、てっかまきの意図を察した。バイキングソウルはググググと体を起こし、ゆっくりであるが体勢を整えようとしている。

レイガは思いっきり飛び上がると、てっかまきの剣の上に飛び乗った。次にてっかまきが思いっきり剣を振りぬく。それに合わせてレイガが下半身のバネを利用して剣を蹴り、バイキングソウルめがけていなずまの如き速さで突撃し、前蹴りを繰り出した。レイガの足はバイキングソウルの腹を貫通して背中まで到達した。バイキングソウルはがっくりとその場に倒れた。

「隊長!」

そのとき、ベルタがてっかまきに駆け寄ってくる。

「リリアンヌが……!」

てっかまきはそれを聞くと急いで5人の隊員が集まっているところへ駆け寄った。隊員たちは血まみれで倒れているリリアンヌを囲んで呆然としている。

膝をついてリリアンヌを調べるてっかまき。腹を大きく食いちぎられていて、既に息は無い。

「リリアンヌが死んだドワ」

てっかまきは立ち上がるが、表情は厳しい。

「僧侶がおらんごとなったばい」

「どうしますか? 撤退します?」

ベルタが顔を青くしててっかまきに進言する。てっかまきはしばらく目をつぶって考えていた。やがて――。

「このまま進む」

「んなアホな! 僧侶無しで戦うっちか!」

フォルノーがてっかまきに食って掛かる。

「私らが撤退したらグレンが危険にさらされる」

「そげん言うたかち、あんた」

次の瞬間、てっかまきは後ろから延髄に強い衝撃を受けた。

「う……!」

倒れこみ、意識を失うてっかまき。

「レイガ……!」

「隊長に何をするんですか! レイガさん!」

「こいつは人の命を何とも思わん下衆だ。こいつに付いて行ったらお前ら死ぬぞ」

レイガは倒れているてっかまきを冷たく見つめながら言い放った。

「俺は隊を離脱する」

「離脱してどうするドワ?」

「本隊へ戻る」

「俺も行くばい。こげな隊長には付きあっちょられん」

顔を見合わせる他の3人。

「私は残ります。隊長に背くのは違反行為です」

「ウチも残るドワ」

「僕ももちろん残りますよ! 一生隊長についていきますから!」

レイガとフォルノーはてっかまきたちを残して、来た道を引き返し始めた。

*****

――1時間後。ランガーオ山地。

「のう、レイガ」

「なんだ?」

2人は獅子門を目指して山を下山していた。雪景色の中、2人の足音だけが、林の中に響く。しかし、2人の目に迷いはなかった。

「てっかまきと過去に何があったとか?」

レイガはフォルノーの問いかけには答えない。

「言えんようなことか」

レイガは首を少し横に振るとぽつぽつと語り始めた。

「……俺はレーンから海に出てずっと行ったところにある小さな島の出身だ。そこで俺たち2人は育った」

「2人?」

「俺の家族は弟1人だった。両親は俺たちを残して蒸発した。子供のころにな」

フォルノーは何も言わず、歩きながら聞いている。

「俺は弟を養うため、12歳で傭兵になった。毎月、仕送りをしたさ。弟からはそのたびに感謝の手紙が届いた」

「んで?」

「でも、5年ぐらい経ったある日、パタッと手紙が来なくなったんだ。俺がいくら仕送りをしても、手紙は来なかった」

そこまで話したとき、レイガはピタリと立ち止まった。フォルノーも同じく立ち止まる。

「不審に思って俺は村に帰ったさ、そしたら弟は既に死んでた」

「なんでや?」

「村長の話では、殺されたと。村の外から来た者に」

「んで?」

「俺は宿屋に行って弟が死んだ日の宿帳を調べてみた。そしたら……」

レイガはキッと前を見つめて語気を強めた。

「そこには『てっかまき』と書かれていた」

「ふーむ……」

フォルノーは腕組みをして考える。

「しかし、それだけじゃ、てっかまきが犯人っちゃわからんとやないと?」

「……、俺は村人たちにも事細かに話を聞いた。そしたら、その日、……」

「その日?」

「現場を見た村人が居た」

それを聞いて驚愕するフォルノー。

「血まみれで倒れてる弟の傍らに立っているてっかまきを見たそうだ。村人が声をかけると、てっかまきは走って逃げた」

「……そうやったんか」

「ああ」

「ふふ……興味深い昔話を聞かせてくれたな」

レイガとフォルノーはとっさに声のした方向を振り向いた。そこには男が立っていた。紫色の鎧に双剣を携えたあの男である。年齢は30代の後半ぐらいだろうか。髪は金色の短髪であり、ニヤニヤと笑っている。

飛び退いて武器を構えるレイガとフォルノー。

「なにもんね、あんた?」

「これから死ぬ者に名乗っても意味はあるまい」

男は懐から1つの石を取り出すと天に掲げた。石は黒く禍々しく光をたたえている。

「魔瘴石!?」

石は強烈な黒い光を発すると、バイキングソウルを1体召喚した。

「2人とも殺せ」

男はバイキングソウルに命じると、そのへんにあった木によっかかって見物し始めた。

バイキングソウルはガシャガシャと2人に近づく。やがて素早く間合いをつめ、レイガに対して上段から垂直に斬り下ろした。内回し蹴りで剣を蹴り飛ばすレイガ。次の瞬間、バイキングソウルは横薙ぎに鋭く斬りつけた。レイガは体勢を低くしてかわす。それと同時にフォルノーがオノでバイキングソウルを後ろから斬りつけた。しかしほとんどダメージを与えられていない。

続けてバイキングソウルは振り向きざまにフォルノーを斬りつけた。フォルノーは斬撃の速さに対応できず、右手で受けてしまう。切断され、舞い上がるフォルノーの右腕。赤い血が白い雪に模様を作った。

「フォルノー! くそっ」

レイガはバイキングソウルに後ろから飛び後ろ回し蹴りを食らわせた。前につんのめって倒れるバイキングソウル。フォルノーは血のしたたる右手を押さえ、額に脂汗をかいている。

「レイガ、俺はもうつまらんけん! 俺がこいつの剣を受けちょる間に留め差し!」

バイキングソウルはグググと起き上がると、レイガに向かって凄まじい速さで突きを繰り出した。とっさにフォルノーがレイガの前に躍り出て突きを体で受け止める。バイキングソウルの剣がフォルノーの体に深々と突き刺さった。その瞬間、レイガがバイキングソウルの顔面に思いっきり膝蹴りを食らわす。バイキングソウルもこれにはたまらず後ろへのけぞった。間髪入れずにバイキングソウルのみぞおちに正拳突きを叩き込む。

しかし、バイキングソウルはグインと体勢を立て直すと、凄まじい速度でレイガを何回も斬りつけた。とっさに飛び退いてかわすものの胸を切り裂かれてしまった。レイガの服がペラリとめくれ、胸についた切り傷があらわになる。レイガは胸を押さえてガクッと膝をついた。

バイキングソウルは留めだとばかりにレイガに対して稲妻のごとき突きを放つ。レイガがもうだめだと思った瞬間――。

バイキングソウルの首が跳んだ。バタリと倒れ落ちるバイキングソウルの胴体。

その後ろから現れたのは剣を横に振りぬいたてっかまきであった。

「てっかまき……!」

てっかまきは既に事切れているフォルノーの遺体をちらりと見たあと、紫色の鎧の男を睨みつける。

「ほう。 久しぶりだな、てっかまき」

「ベルノルト……!」

わけがわからないと言った顔でてっかまきの顔を見上げるレイガ。

「あなただったのね。裏で糸を引いてたのは」

「最後に会ったのはいつだったかな。そうそう、そこのウェディの弟の一件以来か」

レイガは傷口を押さえ、肩で息をしながら立ち上がった。

「どういうことだ……?」

「クク……、冥土の土産に教えてやろう。お前の弟がなぜ死んだのかを」

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