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【小説】竜帝の野望・第1話

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みなさんこんにちは。

てっかまきです。

昨日はインする気にならなくてね……。

新しい小説も書いてなくて、何も書くことが無いんですよ。

でね、PCの中さがしたら、むかし書いた作品が出てきたので、それを上げようと思います。

ドラクエと関係ない完全オリジナルです。

ジャンルはハイファンタジー。

これ書いてた当時、私は男の名前で活動するネナベ小説家でした。

なぜなら、友達から作風が男っぽいと言われたからです。

だから若干、上げるのが恥ずかしいんですけどね。まあ、暇つぶしにはなると思うので、読んでみてください。

この作品は外伝も含めて全部で65000文字の長編です。

全7話+外伝で8つのパートからなります。

1日1話ずつ、イベント情報と並行して上げていきたいと思います。8日間で完結です。

それではご覧ください。どうぞ。

⇒第2話を読む。
⇒第3話を読む。
⇒第4話を読む。
⇒第5話を読む。
⇒第6話を読む。
⇒最終話を読む。

竜帝の野望

プロローグ

いつかの時代。どこかの場所――

暖炉の明かりが柔らかく照らす中、初老の男が若い男と話している。

「いつまでに兵を準備できる?」

「徴兵と訓練で最低3年はかかるかと」

「それでは遅い! 機は今しかない!」

初老の男に一括され、若い男は平身低頭した。

若い男は鎧を身に付け剣を携えていた。物腰からしてかなりの手練である。

「ではこのような作戦はどうでしょう。少数精鋭を用いて敵の懐深く潜り込み奇襲を仕掛ける」

床に跪いた若い男は初老の男を見上げて言った。

「敵の懐深く? どうやって」

木の椅子に座った初老の男はかなり身なりが良い。高貴な身分であることを思わせる。

石造りの部屋にはテーブルと椅子、それから数本の剣が壁に飾ってある。

テーブルの上には数個の宝石と数枚の金貨が光っていた。

「3ヶ月後です。あの日以外に機会は無いかと」

「なるほど。あの日か。それで上手くいくのか?」

初老の男は半信半疑だった。

「上手くいくのか? とは?」

「敵の懐に潜り込んでも守備兵が居ればどうにもなるまい」

初老の男は苛立っていた。

「敵軍の長をこちらに引きこめば確実に勝てます」

それを聞いて初老の男は不敵な笑みを浮かべた。

「なるほど守備兵を丸ごとこちらに内応させるわけか」

「そうです。しかしどのように引きこむかが問題で……」

「それについては私に任せろ。良い案がある」

初老の男はひげを触りながら笑っている。

「良い案とは?」

「こちらの話だ。お前は兵のことだけ考えれば良い」

「はっ……」

若い男は再び平身低頭する。

「お前の働きには感謝している。お前が居なければ私は今の地位には居なかった」

「もったいないお言葉」

初老の男は横目で若い男を見た。

「しかし不思議だ。なぜお前はこんなにも私に忠実に仕えてくれるのだ?」

「それは……あなたの目的が私の目的と一致するからです」

初老の男は眉間にしわを寄せて首をかしげる。

「目的とは何だ?」

「それは……」

若い男は少し頭を下げた。

「それだけは申し上げるわけには参りません」

初老の男は軽く笑いながら言う。

「まあ、良かろう。敵の内応はこちらでやっておく。お前は下がって良いぞ」

「はっ……」

若い男は一礼すると、部屋の出口から出て行った。

初老の男は窓から月を見上げ、不敵な笑みを浮かべて呟く。

「葬ってやろう。竜帝を」

若い男は石で出来た階段を下りながら胸元からロケットペンダントを取り出した。

窓から差し込む月明かりの中、開くと小さな女の子の写実画が入っている。

そして蓋には”ラナ”と書かれていた。

「ラナ……」

男は月を見上げて呟いた。

第1章 発端

クヌルド歴885年4月――

帝国領ディルメース大陸にある山中に1つの小さな村があった。

そこで鍬を両手で持って力強く畑を耕す少女。イサ。16歳。緑色の長い髪の毛を後ろに束ね、顔を泥で真っ黒にしながら働いていた。

「精が出るのう。イサ」

村の老人がイサに話しかける。

「ありがとう、おじいさん。私いっぱい働いて、お金貯めなきゃならないから。薬を買って、母さんの病気を治すの」

イサは汗を拭いながら老人に述べた。

「わしらも出来る限り力になってやりたいんだが、わしらも苦しいからのう……」

老人は申し訳無さそうに言った。

「いいのよ、おじいさん。気にしないで」

イサは笑顔で老人に答えた。

夕刻、イサは畑仕事を終え帰路についた。家に入ると古いベッドの上に1人の女性が横たわっている。それはイサの母、エレトリであった。エレトリは苦しそうに咳をしながら言う。

「ごめんねイサ。いつもあなたばかり働かせて。父さんが生きてれば……」

「いいよ。運動になるし」

イサは笑いながら食事の準備をしている。程なくして粟の粥が出来た。

「起きれる? 母さん」

イサは母を抱き起こすと粥を食べさせ始めた。

「うん、美味しい」

エレトリは粥の味を褒めたがイサは首を横にふる。

「……こんなのが美味しいわけ無いよ」

エレトリは何も言えない。

「明日、私、町で野菜売ってくるから。売れたお金でパン買ってくる」

イサがそう言うとエレトリは切なげに笑った。

「久しぶりのパンだよ母さん! 私、とびきりの美味しい店知ってるから」

エレトリの表情は晴れない。

「……母さん」

「今日はもう休みましょう……。イサ」

「うん……」

2人は早めに床に就いた。

翌朝、イサは大量の野菜を背に山を降りていた。

(さすがにちょっと持って来すぎたかな……)

だんだん息が切れてくる。

(頑張らなきゃ。今日はパンを買って帰るんだから)

イサは途中で休みながらも山を降り、4時間ほどかかってやっと町に辿り着いた。

ネフヘスの町――。

人口1500人ほどの小さな町である。しかし村に住むイサにとっては大きな町だった。イサは出店が並ぶ区画の一角に布を広げ、野菜を並べて呼び込みをし始めた。

「さあ寄ってらっしゃい! 見てらっしゃい! 美味しい美味しい野菜だよ!」

しかし、通行人が止まる気配はない。そのまま夕方まで叫び続けたが全く売れなかった。

「おじさん! 野菜買ってよ!」

「な……何なんだね、お嬢ちゃん」

通行人の1人の腕を掴み、無理やり野菜を見せる。

「こんなの買えないよ。全部しなびてるじゃないか」

通行人はイサの腕を払うと行ってしまった。

「やっぱり……。ダメかなぁ……」

イサは肩を落として野菜を片付け始めた。

「今日も……粟のお粥か……」

イサは落胆してため息をついた。

「よう、嬢ちゃん! 野菜かい?」

1人の男がイサに声を掛ける。年の頃は35歳ぐらいであろうか。痩せ型の体型。銀色の髪に端整な顔立ち。腰には剣を携えている。

「あ、はい。野菜売ってたんですけど、全然売れなくて」

「どれ、見せて」

男は野菜を品定めし始めた。

「……全部しなびてるな」

「あ……はい」

イサはバツが悪そうに頭をかく。

「俺は剣術道場を営んでいてな。門下生どもに飯を食わせなきゃけないんだよ」

「そうなんですか」

「ま、あのボンクラ共にはこの野菜で十分だろう。全部買うよ。いくらだい?」

「ええっ! 全部買ってくれるんですか?」

イサは歓喜した。これで念願のパンが買えるのだ。

「ええっと、ちょっと待って下さい……」

イサは指を折りながら値段を計算した。

「……銅貨48枚ですね」

「銅貨48枚ぃ?」

男は顔をしかめる。

「た、高いですかね?」

イサは恐る恐る男に尋ねた。

「48枚なんて数えるの面倒臭えよ。ほらよ」

男はイサの前に銀貨を1枚を放り投げると野菜を布ごと片手で持ち上げ肩に乗せて去っていった。イサは銀貨1枚を手に持ったまま震えていた。銅貨100枚が銀貨1枚と等価であるのでほぼ倍の値段である。イサには男の後ろ姿が神様に見えた。

(ぎ、銀貨なんて初めて見た……)

イサはその鈍く光る銀の塊をしばらくまじまじと見つめていた。

夜、イサは山を登っていた。手には大きなパンが5つ入った袋が握られている。

(銅貨10枚でパンを買って、残ったのが90枚だから、これを全部貯めよう)

そんなことを考えながら山を登り、やっと村に辿り着いた、そのとき――

「イサ! イサ! 大変だよ! お母さんが!」

村の若者が息を切らしてイサを呼びに来る。何が起こったのか察したイサはパンを放り出して家に向かって走り始めた。イサは走った――全力で――

家のドアを勢い良く開けると村の長老と数人の村人が中に居た。床一面に広がった血。もがき苦しむエレトリ。

「母さん!」

イサはエレトリの元に駆け寄り手を握った。

「ちょうどこの家の前を通りがかったとき、物凄く咳き込む音が聞こえて……中に入ってみるとおばさんが血をたくさん吐いて倒れてて……」

1人の若い村人が状況を説明するもイサの耳には届かない。

「母さん! 母さん!」

「イ……サ……ゴホッ」

エレトリが咳をするとまた大量の血が口から吹き出た。

「はあ……はあ……イ……サ……よく……聞いて……」

エレトリはか細い声を絞りだすように話している。

「母さん! 私はここにいるから! 母さん!」

「あ……なたの……父さ……んは……死んだ……んじゃ……ない……の」

「母さん!」

「お願い……父さんを……探し…………て……」

それだけ言うとエレトリは息を引き取った。

――イサの慟哭が村じゅうに響き渡った。

長老の家――

椅子に腰掛けたイサは無表情のまま俯いて黙っている。向かいに腰掛けた長老の表情は厳しい。

「エレトリの言ったことは本当じゃ。お前の父親ペルは死んだのではない、連れ去られたのじゃ。いま生きてるかどうかはわからんが」

イサは顔を上げて長老の目を見た。

「……どういうこと?」

「あの日のことを話すのはエレトリに止められていたが、こうなった以上、話さねばならんだろうな……」

長老は少し俯くと話し始めた。17年前のことを――。

※※※※※※

クヌルド歴868年2月――。

エレトリ、このとき18歳。エレトリは山に山菜を摘みに出ていた。

(思ったよりたくさん採れた)

エレトリはたくさんの山菜を手に山の中を帰路についた。

もうすぐ村に着くといったころ、1人の男が上半身裸で仰向けに倒れているのを見つける。見たところ30歳ぐらいであろうか。長身。緑色の長髪に白い肌、非常に端整な顔立ち。

「あの! 大丈夫ですか!」

エレトリは男に駆け寄り抱き起こした。手にべったりと付く血。男は背中に重傷を負っていた。何度も呼びかけるが反応は無い。エレトリはひとまず自分のスカートを裂いて簡易な包帯を作ると男に応急処置をし、村に向かって駆け始めた。幸い村から近い場所だったのですぐに人を呼んでくることが出来た。村人たちは男をエレトリの家に運んだ。

村で一番医術に詳しい女がペルの手当てをしている。

「……よし、これでいいわ」

「この人死んじゃうの?」

エレトリは心配そうに尋ねた。

「とりあえず、傷が原因で死ぬことは無さそうよ。でも早く目を覚ましてもらって、ご飯を食べさせないと衰弱して死ぬかもしれないわ」

「……どうすればいいの?」

「暖炉の火を絶やさないようにして暖かくして。寒かったら体力を消耗するから。あとはこの人の気力で目を覚まして貰うしかないわね」

――しかし男の意識は戻らない。3日経っても1週間経っても戻らなかった。

(このままでは死んでしまう)

そう思ったエレトリは村の女のところに行った。

「あの人、まだ目を覚まさないの」

「これはもう駄目かもしれないわね……」

「そんな……」

女は顎に手を当てて少し考えた。

「そうだ! 気付け薬があればなんとかなるかも」

「気付け薬?」

「そう、町の薬屋さんで売ってる薬よ。でも……」

「でも?」

「銀貨20枚もするの。あなたじゃとても……」

女が話し終わる前にエレトリは走りだしていた。エレトリは急いで家に帰るとベッドの下に潜ると1つの大きな宝石を取り出した。以前山中で死んでいる野盗を発見し、その野盗の死体から取った宝石であった。

(これで気付け薬を買えば……!)

エレトリは宝石を胸元に入れると村の入口に向けて走り始めた、するとちょうど畑仕事をしてる若者が居た。

「あ、ノト! 私が帰るまでうちの家にいる男の人見てて!」

「はあ? 何言ってんだよ。俺には仕事が」

「後で銅貨5枚あげるから!」

エレトリはそう言うと村の入口を出て一気に山を駆け下り始めた。なんで自分がこんなに一生懸命になってるのか、なんで万が一のときのために大事に取っておいた宝石を売ってまであの男を助けたいのか、エレトリ自身にもわからなかった。町についたエレトリはその辺にいた通行人に声をかける。

「すみません! 薬屋さんってどっちですか!?」

「……あ、ああ。薬屋ならこの通りの突き当りを右に曲がってすぐだけど」

エレトリはお礼も言わずに駆け出した。

「なんだあの娘」

勢い良く薬屋のドアを開け、息を切らすエレトリ。

「ど、どうしたんだい……!?」

呆気にとられる店主。

「はあ……はあ……あのっ! 気付け薬ください。かなり深い傷で、ずっと目が覚めなくて!」

店主はしばらく考えたあと、奥から薬を持って来た。

「これが気付け薬だよ。1回に半分飲むんだ。効果が無かったらもう半分飲む。2回飲めば大抵は目が覚めるから。絶対いっぺんに飲ませちゃダメだぞ」

「はい」

「じゃあ銀貨20枚だよ」

「ごめん、おじさん。銀貨持ってないの。代わりにこれで!」

エレトリは宝石を放り投げると薬を持って駆け始めた。

「あ! ちょっと困るよ! お嬢ちゃん!」

店主はやれやれとため息を付くと、床に落ちた宝石を拾ってまじまじと眺めた。

そのうち宝石を持つ手が震えてくる。

「こ、こ、こりゃ金貨500枚はする品じゃないか」

エレトリが持ち帰った薬は非常に良く効き、飲ませてから1時間ほどで意識が回復した。

「う……うう……ここは……?」

エレトリは事情を説明した。

「そうか……うっ……君が助けてくれたのか」

「そうよ、あなた凄い傷を負ってて」

「野盗にやられた」

「野盗? ああ、この辺たまに出るのよね」

「剣さえあれば……」

そう言うと男は眠ってしまった。その後、再び目を覚ましたときその男はペルと名乗った。その後もエレトリはペルに献身的な介護をした。

――数日後、エレトリはかねてから疑問に思っていたことをペルに尋ねてみた。

「ねえ、ペル」

「何だ?」

「ペルは一体どこから来たの?」

ペルは何も答えない。

「……言いたくないの?」

ペルは何も言わない。

「じゃあ、もう聞かない」

「どこから来たのかもわからないような男を家に置いておくのか?」

「……あなたは悪い人じゃないよ。何となくわかるもん」

エレトリはそう言いながら笑った。

3ヶ月後――

ペルは歩けるまでに回復していた。だがときどき痛みがぶり返すことがあり、安心はできなかった。ペルが回復して喜ぶエレトリ。しかしそんなある日――

「ど、どうしたんですか長老。それからみんなまで」

長老と村人たちがエレトリの家に押しかけ、ペルを取り囲んだ。

「治ったならこの村を出て行ってもらいたい」

「な、何言ってんの!?」

エレトリは驚き、長老に食って掛かった。

「……この男は素性が知れない。そんな者を村に置いてはおけん」

長老の表情は巌しい。

「でも、まだ完全に治ってないんですよ!」

「歩くことはできよう」

「だからってこんな山の中に放りだしたら……」

「いいんだ、エレトリ」

ペルはそう言ってエレトリを制止すると、家から出た。

「俺が出て行けば済むことだ」

「ちょ、ちょっとペル……!」

その時、

「大変だー!!」

村の若者ノトが長老の元に息を切らして走ってきた。

「なんじゃ、騒々しい」

「た、大変なんです。村に野盗が来て……!」

「野盗ならクルゼルに任せておけばよかろう」

クルゼルとは村で一番剣が強い男である。

「そ、それが! 数がものすごく多くて!」

「なんじゃと?」

「ざっと50人は居てクルゼル1人じゃどうしようも……」

クルゼルは10人ほどの野盗に囲まれていた。傍らには3人の野盗の死体が転がっている。野盗のうちの1人が後ろからクルゼルに斬りかかった。クルゼルは振り返り一撃で野盗の首を撥ねる。血しぶきを上げて野盗は倒れた。

「バカ野郎! 一人ずつかかるやつがあるか! 同時にかかれ!」

頭目と思しき野盗が部下たちに命令する。すると、9人が同時にクルゼルに斬りかかった。クルゼルは奇声を上げて1人の野盗の胸を突き刺したが、残りの8つの刃に無残にも貫かれてしまった。

「クルゼルー!」

ノトの一報を聞いたエレトリや村人たちが駆け寄って来たが、彼らが目にしたのは大勢の野盗団とクルゼルの死体だった。頭目は村人たちを見ると尋ねた。

「お前らで全部か?」

村人たちは震えて動けない。

「こ、こんな貧乏な村を襲ってどうするつもりじゃ! ここには金目のものなど何もない」

長老は必死に頭目を説得する。

「金は無くとも女は居るだろう」

野盗達は下卑た笑い声を上げながらエレトリを舐めまわすように見た。エレトリは背筋が寒くなった。足が震えて動けない。

「女を奪え!」

頭目が叫ぶと3人の野盗が奇声を上げて一斉にエレトリに飛びかかった。エレトリが悲鳴を上げた瞬間、3人の首が同時に飛んだ。血しぶきを上げて倒れる3体の死体。傍らにはクルゼルの剣を持ったペルが立っていた。

「ちっ、まだ居やがったのか!」

頭目は苦々しい顔をしている。

「エレトリ、下がってろ」

ペルは40人ほどの野党団を見ても平然としている。

「何やってる! さっきと同じように10人で同時にかかれ!」

ペルに10人の野盗が飛びかかった。ペルは大きく息を吸い込むと剣を大きく薙ぎ払った。するとかまいたちのような真空の刃が発生し10人の体が同時に上下二つに切り裂された。血しぶきが上がる暇もない一瞬の出来事である。

「じゅ、10人を同時に……!」

頭目はさすがに戦慄したようで、

「逃げろ! 引き上げだ!」

と言うと、部下たちを引き連れて去っていった。

「うっ……ううっ……」

ペルは戦うにはまだ無理があったようで、痛みに耐えかねてうずくまってしまった。

「ペル……!」

エレトリはペルの隣にしゃがみこんでペルの背中にそっと手を当てた。

「大丈夫だ……ちょっと……息が上がっただけだ」

ペルは激しく息を切らしている。

「長老! ペルに村に居てもらったほうがいいでしょう? また、あの野盗たちが来るかもしれないし」

「むう……」

この後、長老はペルに謝罪し、ペルは村の一員として認められた。

※※※※※

「……それからどうなったの?」

「それからペルとエレトリは恋に落ち結ばれた。それから1年後にお前が生まれたんじゃよイサ」

イサは黙って聞いている。

「お前が生まれてからペルは変わった。それまではどこか陰のあるやつであまり笑顔を見せず村人とも関わろうとはしなかった。いや、意図的に避けてるような感じがしたな。でもお前が生まれてからは笑顔が多くなり、畑を耕したり村人とも積極的に話すようになった。そうして、お前が1歳のとき、あの事件が起こったんじゃ」

「あの事件?」

※※※※※

ある日、長老が食事をしていると不意にドアが開いた。

「長老! ちょ、長老!」

「何事じゃノト。人の家に入ってくるときはノックぐらい……」

「ぐ、軍隊が……帝国軍が」

「な、なんじゃと!?」

「村の周りを取り囲んで……」

長老とノトは村の入口に急いだ。入り口には100人を超える兵士が押し寄せ、1000人はくだらない数えきれない兵士が村の周りを取り囲んでいた。

「こ、これは……」

長老が絶句していると1人だけ鎧の色が違う兵士が近づいてきた。おそらく隊長であろうか。

「お前がこの村の責任者か」

「そ、そうですが、何か……」

「お前を犯罪者を匿った罪で連行する」

「な、なんですと……!?」

村人の間でどよめきが起こる。

「待ってくだされ。犯罪者とは身に覚えが……」

「待ってくれ、長老」

抗議する長老を制止し前に出てきたのはペルであった。腰には剣を携えている。

「お前らの狙いは俺だろう?」

ペルは不敵に笑った。

「そうだ。貴様だ。一緒に来てもらおう。そっちの老人もな」

「断る」

ペルはきっぱりと言い切った。

「なんだと?」

「村の者に手を出さないと約束するなら俺は一緒に行ってやる」

ペルは隊長を睨みつけながら言う。

「ペ、ペル。エレトリとイサは……」

長老がペルに聞いても何も答えない。

「あ、あの、ペルは一体何をしたんでしょうか?」

村人の一人が尋ねた。

「こいつは国家に反逆した重罪人だ」

ペルは隊長を睨みつけている。長老も他の村人たちも声が出ない。

「取引に応じるのか応じないのか。早く答えてくれないか?」

ペルは不敵に笑いながら隊長に尋ねる。

「お前がそんなことを言える立場だと思うのか? この状況で」

隊長はペルに冷たく言い放った。

「……暴れるぞ」

「何?」

ペルはゆっくりと剣を抜いた。

「無理に連行しようとしたら俺は暴れる。何人死ぬかな」

隊長は剣に手をかけながらも後退りしている。

「俺も死ぬだろうが、それでもここにいる兵士100人は確実に殺せる」

兵士たちは息を呑んだ。

「兵士100人を殺すか、老人の命を1人助けるか、選べ」

ペルはゆっくりと隊長に剣を突きつけた。隊長は震えている。

「そ、そっちの老人は免罪する。お前だけ来てもらおう」

「もし約束を違えたら、どんな手段を使ってでもお前を殺すぞ」

「わ、わかった」

ペルは剣を捨てた。即座に3人の兵士が周りを取り囲み、ペルに手枷を取り付ける。

「ペル、エレトリとイサは!?」

長老が叫ぶ。

「家のベッドの下に隠れさせた」

ペルは長老のほうを振り返った。

「長老、2人をよろしく頼む」

そう言うとペルは帝国軍に連行されていった。

※※※※※

「そして父さんはどうなったの?」

「わからん。その後、村に帰ってくることもなかったし、手紙一つ来なかった」

重苦しい沈黙が2人を支配する。

「私……。父さんを探しに行く」

「バカなことを言うでない。お前は女じゃぞ。女の足で帝国全土を探すというのか」

長老は制止したが、イサの目は決意に満ちていた。

「頼む。行かないでくれ。エレトリが死んで村の者はみんな悲しんでおる。お前まで死なせたくないんじゃ!」

長老は懇願した。ペル、エレトリ、クルゼル、これ以上村人を失いたくなかった。

「ごめん、長老。私。死んでもいいから探しに行く。”探して”って母さんの遺言だから」

イサの決意はもはや揺るぎなかった。

「イサ……」

長老は諦めたように立ち上がると家の奥へと入っていった。

「長老?」

長老が奥から持って来たのは鎧と剣であった。

「わしができるのはこれくらいじゃ。持っていけ」

「長老……」

イサは鎧と剣を手にとった。鎧は皮製で所々傷んでおり穴が空いている。剣は錆び付いていてほとんど使い物にならないような代物だった。しかし、イサはその心遣いが嬉しかった。

「ありがとう。長老」

翌日早朝、男装し鎧を身に付け剣を携えたイサは村人全員が見守る中、村の入り口に居た。

「イサ、必ず帰ってこいよ」

「ペルを連れて帰ってきて」

「みんな待ってるからな」

次々と見送りの言葉をかける村人たち。

「イサ、お前はわしにとっては孫のようなものじゃ。どうかこのじじいを悲しませることはせんでくれよ」

長老の目には涙が浮かんでいた。

「わかってる。ありがとう。おじいちゃん」

イサは村を後にした。しかし探してくると歯切れよく言ったものの、大陸2つを有するこの広い帝国領土の中から人を1人探すのにまず何をしたら良いかもイサにはわからず山中で途方にくれていた。

(とりあえずネフヘスの町に行ってみよう……)

イサは山を下り始めた。

幕間 キャラクター紹介

イサ

16歳。女性。貧しい農村で農業をして暮らしている。家族構成は母のみ。肉体労働をしているため並の女性よりは身体能力は高い。真面目で正義感の強い性格。信念が強い。実は冷静沈着で頭がキレる一面も。幼いころに父が死んだため父の顔は知らない。父に似て剣の才能がある。母から父の話を聞くことが好き。頑固で融通がきかないところがある。

エレトリ

33歳。女性。イサの母。重い病気を患っており、イサが面倒を見ている。優しく献身的な性格で、ペルが重傷を負って初めて村に来た時にも村人が不気味がる中、ただ一人ペルに献身的な介護を行い、命を救った。イサと同じく頑固で融通がきかないところがある。

ペル

生きていれば44歳。男性。イサの父。不思議な雰囲気のある男性でいつも物憂げな表情をしていた。恐ろしく戦闘能力が高く、武装した野盗が村を襲った際には剣で13人を1人で倒した。イサと同じく真面目で正義感の強い性格。信念が強い。不必要に人と接するのを嫌う傾向があり、他の村人とは距離を置いていた。エレトリには何かを隠しているそぶりがあった。15年前、帝国軍に連れ去られて行方不明になる。生死は不明。

長老

年齢不詳。男性。村でいちばんの年長であり、村を取り仕切る管理者。困ったときのみんなの相談役であるが、家にヘビが出ただの物を無くしただの下らない相談が多くて困っている。ペルが村に来た17年前から今と全く同じ老人の容姿をしており、年齢が何歳なのかは誰も知らない。

⇒第2話を読む。

コメント

  1. フェアリー より:

    続きが気になる…w
    明日が楽しみ!

  2. ハルカ より:

    これは読み応えありそう♪
    ワクワク(*´▽`*)