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【小説】竜帝の野望2-ブア島の大戦-・第1話

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まえがき

みなさんこんにちは。

てっかまきです。

はい! 今日から「竜帝の野望2-ブア島の大戦-」を連載します。

この物語は前作、「竜帝の野望」の終わりから6年後の未来の話です。

⇒竜帝の野望

この作品はねー、実は「RPてっかまき物語-死霊との戦い-」に設定や展開を使いまわしてるのですよ。

だから設定や展開、一部のキャラ名などが一緒なんですけど、こっちのほうがよりシリアスで重厚な物語となっていますので、ぜひご覧ください。

毎日1話ずつ連載で、1週間で完結の予定です。

文字数は全部で35,000文字の中編です。

それでは、どうぞ。

⇒第2話を読む
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竜帝の野望2-ブア島の大戦-

プロローグ

「隊長! 損耗が激しすぎます! これ以上もちません!」

軍曹は中隊長に撤退を懇願した。

「なんとしてもこの防衛戦は死守しなければならん! 撤退は無い!」

百人規模の中隊がいっせいに「それ」に向かって突撃する。「それ」が剣をなぎ払うと十人が一瞬で肉塊と化した。

「たったひとりの敵兵に何を手こずっている! 全員で囲んで斬れ!」

黒い甲冑に身を包んだ「それ」は巨大な剣を棒きれのように振り回し自分を取り囲む六人の兵を真っ二つにした。「それ」の持つ剣は剣と形容しがたいほど巨大なものであった。長さは人の身長よりもはるかに長く、厚さはレンガのごとく分厚く、常人ならば持ち上げることすら不可能であろう。

「それ」は両手持ちにした巨剣を思い切り横薙ぎに振りぬいた。またしても十人が肉塊と化した。

――いま、この一人の黒い剣士の前に一個中隊が全滅しようとしていた。

「隊長、私が行きます」

少尉であるひとりの女剣士が隊長に申し出る。

「たのむ、もうお前以外に望みはない」

この女剣士は名をミリアという。リシン流剣術の免許皆伝を持つ手練である。ミリアは小ぶりの剣をスラっと抜くと黒い剣士の前に歩み出た。黒い剣士は巨剣を片手で持ったまま歩みを止めない。二十歩ほどある間合いがどんどん詰まっていく。十五歩――、十歩――、八歩――。

その瞬間、ミリアは一足飛びで黒い剣士の懐に飛び込むと閃光のごとき素早い突きを繰り出した。しかしその突きは黒い剣士に届くことはなかった。黒い剣士はミリアの小剣が届くよりも速く自らの巨剣を振り回したのである。ミリアは肉塊ですらない「肉塵」と化した。

中隊長は戦慄した。叩き上げで大尉まで上り詰めたこの中隊長ですら、眼前の光景を目の当たりにすると全身の毛穴が開き汗が吹き出てくる。心臓は破裂しそうに鼓動し、足がガクガクと震える。

「ひ、退け! 全員撤退しろ!」

隊員たちは一斉に蜘蛛の子を散らすように退散する。しかし、真に恐ろしい光景はここからであった。黒い剣士は逃げる隊員たちの前に一瞬で回りこむと再び巨剣を横薙ぎに薙ぎ払った。またしても十人が肉塊と化した。ここまででこの黒い剣士は五十人の兵士をひとりで殺した。ここまで損耗すると中隊は完全に崩壊であり、全滅と言っていい。

中隊長は固まった。どうしたらいいのかまるでわからなくなった。突撃しても斬られ、撤退しても斬られるのである。嫌な脂汗をじっとりとかきながらめまぐるしく頭を回転させていると、突然視界が真っ暗になった。

「え?」

中隊長が見上げるとそこには黒い剣士の巨躯があった。中隊長は目の前で何が起きたのか理解する間もなく肉塊と化した。

そこから先は阿鼻叫喚であった。指揮系統を失った兵たちは大混乱に陥った。悲鳴と怒号が入り交じる中、黒い剣士はガシャガシャと甲冑の音をさせながら戦場を歩きまわった。

そして事が終わると巨剣を担ぎ、戦場をあとにした。後には百人分の肉塊だけが残った。

――クヌルド歴895年。竜帝国にある、とある町の酒場。

「あーあ、退屈だなぁ」

1人の男がエールを飲みながらくだを撒いている。名をレイガと言う。今年で二十三になる。傭兵であった。黒い短髪。長身で筋骨隆々とした傷だらけの体に鋼の胸当てを纏い、椅子には得物である片手戦斧を立てかけてある。レイガは体を木製の椅子に持たれかけ、宙を眺める。

「イサ様の時代になってすっかり平和になってしまったからなぁ」

同じテーブルに座った傭兵仲間は顔を赤くして言う。

「こちとら商売上がったりだよ」

別の傭兵仲間は言う。かなり泥酔している。

現在の竜帝は第240代イサ・アレドラードという女帝である。「竜帝」と言っても別にドラゴンの類ではない。人間である。その名はこの帝国の君主の称号であり、その血脈が竜の神の子孫であるという神話に基いてつけられたものであった。

イサ以前の帝国は貴族制を敷いており竜帝はあくまでも貴族の長であった。ゆえに貴族の造反や貴族同士の戦争が多々あり、傭兵の仕事はたくさんあった。だがイサの治世になってからその体制は一変する。イサは貴族制を廃止し、一君万民の中央集権体制を作り竜帝に権力を集中させることで造反や内乱を無くし、泰平の世を作り上げた。当然、傭兵の仕事は激減する。

「どこかでデカイ戦争でも起きねえかなぁ」

レイガはうつろな目をして言った。かなり酔っている。そんなことを言っていると1人の女が酒場に入ってきた。年の頃は25、26歳、長い髪を後ろに結い、男物の服を着ている。小柄な女である。

「マスター。蒸留酒ちょうだい」

「はいよ」

女はカウンターに腰掛けると蒸留酒をちびちびとやり始めた。

「お前って今、どうやって食いつないでるの?」

傭兵仲間がレイガに聞く。

「酒場の掲示板の依頼。しょぼくれた稼ぎにしかならねえ」

傭兵仲間たちは大笑いした。

「お前らも似たようなもんだろうが」

レイガは傭兵仲間の頭を鷲掴みにしてくしゃくしゃとやった。

「いま帝国政府がゼレルシュと揉めてるだろ。島の件でさ」

傭兵仲間は言う。ゼレルシュとはゼレルシュ王国のことでいま帝国と外交問題を抱えている国である。

「ああ、そう言えばそんなのあったな」

「あれ、上手く行けば戦争になるんじゃねえか?」

「かもな。神様! どうか戦争になりますように!」

全員が大爆笑した。その会話を聞いていたカウンターの女はゆっくりと立ち上がるとレイガたちに近づいてきた。

「平和な世の中が嫌いか?」

興味深げにその女は言った。

「ああ? なんだてめえは」

レイガは鬱陶しそうな顔をして言う。

「嫌いに決まってんだろ」

傭兵仲間の一人は鼻で笑いながら言った。

「へえ、そう。世の中には平和が嫌いな人間もいるのね」

女は馬鹿にするように言う。

「いったい何なんだ、てめえは!」

別の傭兵仲間が女の胸ぐらを掴んだ。その瞬間、傭兵仲間の体は宙を舞っていた。テーブルをひっくり返し床に激突する傭兵仲間。

「なにすんだ、てめえ!」

大げんかに発展する酒場。

――同刻。帝都。宮殿バルコニー。

「ブア島の交渉は難航しているようです陛下」

イサの副女官長レリィは厳しい表情をしてイサに報告する。

「それはリヴューから直接聞いた?」

イサはレリィに尋ねる。リヴューとは現在の帝国の外務大臣である。

「はい。閣下がそう仰っておられました」

「難航って具体的には?」

「向こうは全く譲歩する気がなく、ブア島に軍事施設を整備するための時間稼ぎではないかと」

イサは真剣な表情をして考えている。

「明日、御前会議を開くと全閣僚に伝えて」

「はい。かしこまりました」

「下がっていいよ」

一礼して下がるレリィ。

「……これは確実に戦争になる」

イサは一人で静かに呟いた。

クヌルド歴894年1月02日、ゼレルシュ王国の漁船団が新しい島を発見する。この島はゼレルシュ王国のあるアルルー大陸の東、竜帝国が保有するディルメース大陸の西の海上にあった。ゼレルシュ王国はこれをブア島と名づけて領有を宣言。竜帝国は国際法違反だとして即座にこれに抗議した。ゼレルシュ王国は最初に発見したのは我々だから領有は問題ないと主張、一方、竜帝国は島はディルメース大陸のほうに近いため竜帝国が領有するのが正当と主張。両者の主張は平行線をたどった。894年2月04日、ゼレルシュ王国は30000の大軍を擁してブア島に上陸し、全土を占領してしまった。これに竜帝国は猛反発。しかし、この時点ではお互いに戦争は望んでおらず、ゼレルシュ王国の全権大使をディルメース大陸の西の町に招いて外交交渉を行うことになった。

――それから1年後。895年2月12日。御前会議。

「1年も交渉しましたが思うように成果が出ていません」

首相のマラカウは苦々しい顔でイサに報告する。

「具体的に向こうはなんて言ってるの?」

イサは外相リヴューに聞く。

「それが、共同開発を提案しても我々が発見したの一点張りで……」

リヴューはため息をついた。

「これ以上、時間を延ばされると危険です陛下」

軍務大臣ガゼットは真剣な顔をして言う。

「島に要塞をこれ以上作られたらもう打つ手が無くなるってこと?」

イサは冷静である。

「そうです。時間が経てば経つほど不利です」

ガゼットの目つきは鋭い。

「もし、ブア島に攻めこむとするとこちらの兵力はどれぐらい出せる?」

「おそらく、40000前後かと」

イサの顔が険しくなる。

「向こうは30000は居るでしょ。向こうはある程度要塞を作り終わってるから制圧するのに40000だと足りないよ。あと10000出せない?」

帝国軍は志願制であるので徴兵はできない。イサに痛いところを突かれてガゼットは唸っている。

「傭兵を雇うのはどうでしょうか? 最近、傭兵の雇用問題が深刻化しておりますので」

内務大臣エルラが提案する。

「それは良いかも。専業の傭兵じゃなくても行ってみたいって人いっぱいいるんじゃないかな」

イサの表情が少し明るくなった。

イサは以前から剣術教育という政策を実施している。各町村に国営の剣術道場を設置し国民全員に剣術を習わせたのである。このことで治安の良化、国民の健康増進、志願兵の訓練にかかる時間短縮など成果が見られている。よって、普通の一般人でもすぐに戦争に行けるだけの能力はあった。

イサがこのような政策を行った背景には自らが剣に優れているということがある。イサは世界最強の剣の達人として知られているのである。貴族制を廃止した際にも抗議に来た貴族とその軍勢三百名をたったひとりで壊滅させ貴族たちを震え上がらせた。

「もし傭兵を雇うとして戦費のほうはどうなの?」

イサは財務大臣アネンに尋ねる。

「昨今は陛下の政策のおかげもあって経済発展が著しいので財政も潤っており50000の兵士であれば1年ほどの派遣なら問題ないかと」

アネンは手元の書類を見ながら淡々と答える。

「1年か……。あのくらいの島なら1年もかからないでしょ?」

イサはガゼットに尋ねる。ガゼットは少し考えてから

「おそらく半年でいけるかと」

と答えた。その上で

「しかし、問題があります」

と提起する。

「問題ってなに?」

「50000の兵を全部ディルメースの西端に持ってくるには少なくとも4ヶ月はかかります。その間にも相手の要塞は増強されていきます」

この世界ティシュラルトは恐ろしいほど広大で町から町へ徒歩で1ヶ月などザラな世界である。

「じゃあ、こっちも5000ぐらいの精鋭を先に上陸させてせめてスムーズに本隊が展開できるように拠点を確保ぐらいはさせとけばいいんじゃない? そしたらちょっとは時間の節約になるかも。あの島の広さなら要塞を守る守備兵が25000は必要だから、積極的に攻撃してくるのは5000ぐらいでしょ」

「なるほど。先遣隊ですか。ではディルメース西側で精兵を募って即座にブア島に派遣し、帝国全土の兵をディルメース西端に集めるまでの間に上陸させ、拠点を確保させておくと。ならば、ディルメース西側には常備兵力が3500ありますので、1500人は傭兵で補充ですな」

「うん。それでいいよ」

「あの……完全に戦争の話になっておりますが、外交交渉はもう決裂ということですか?」

リヴューがバツの悪そうに聞く。するとイサは顰め面をした。

「外交はもう決裂でいいよ。どうせやっても無駄でしょ。こっちの意図を悟られないように適当に交渉つづけるふりだけしといて」

「はい、わかりました」

「じゃあ、今日の会議は解散!」

――その後、宮殿バルコニーにて。

「本当にあんなことして大丈夫ですか? 陛下」

副女官長レリィはイサに尋ねる。

「大丈夫ってなにが?」

イサはあくびをしながら答える。

「勝手に戦争なんか決めちゃっていいんですか? あの方にお伺いを立てなくて……」

「だって、勝手にやっていいって言われてるから」

イサはむくれて宮殿内に戻ってしまった。レリィは言い知れぬ不安を感じていた。

この1週間後から傭兵募集が始まる。

⇒第2話を読む

コメント

  1. ハルカ より:

    外伝の続きがあったのね。楽しみ♪