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【小説】放浪の帝イサ・第7話-反乱-

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みなさんこんにちは。

てっかまきです。

今回はイサが軍を指揮します。

どのような戦術で戦うのでしょうか?

そしてイサは勝てるのでしょうか?

では、ご覧ください。どうぞ。

第7話-反乱-

ある日の昼。レデイスの町にて。
イサは飯屋に入り、昼食を取っていた。昼食時ということもあり、中は人でごった返している。この店は安価で大量に食べれることが売りの店であったため、客の殆どは男性であった。そんな男性で満員のカウンターの一角にイサはちょこんと座り、大量に盛られたパスタを食べている。しかも女なのに剣を携えているのだ。みんな珍しいのかイサを見てはヒソヒソ話している。
「姉ちゃん珍しいね、こんなむさ苦しいところで飯なんて」
右隣に座っていた40歳ぐらいの男性に声をかけられる。
「別に私そんなの気にしないから」
イサはすました顔でパスタをフォークにくるくると巻きつけている。
「剣士さんかい? 立派だね女なのに」
「ええ」
そのとき、左隣に座っていた男2人が話す声がイサの耳に入る。
「お前、結局サオガス行くの?」
「いいや、面倒臭えよ反乱なんて。どうせ鎮圧されて終わりだよ」
反乱という言葉に反応するイサ。右の男性に聞いてみる。
「ねえ、おじさん。反乱ってなに?」
男性はクジラ肉煮込みを口に含みながら答えた。
「サオガスの町民が領主さまに反乱起こすんだってよ。周りの町も協力してくれとか言ってビラが回ってたよ。まあ、無理もないけどな。ここんとこ警察も行政もマヒしてて大変だよ。うちの町は自警団作って対応してるけどな」
サオガスの町とはレデイスの町から歩いて2週間ほどのところにある比較的近い町で領主の館に一番近い町であった。人口は3500人。中堅規模の町である。
「それ、決行日っていつなの?」
「5日後とか言ってたっけな」
「……おじさん、これあげる」
イサは3分の2以上残したパスタを男性に押し付けると銀貨1枚カウンターに置いて釣りも貰わずに店を飛び出した。イサが走って向かったのは町の入り口のすぐ外にある馬屋である。ここで馬を借りればちょうど5日で着くのだ。
馬で街道を走ってる間、イサは疑問だった。この領地は昔から豊かで穏やかな土地のはず、領主も別に圧政を敷くような人間ではない。ただ1つ不安なのは領主が非常に若く経験が浅いことだ。ここの領主はグインルと言い、17歳の男で、まだ任命されて1年しか経っていなかった。前の領主であった父親が急逝し、若くして任命されたのである。警察や行政がマヒということは何かしくじったのか。もう1つ不審な点は反乱が堂々と行われすぎていることだ。反乱への参加を呼びかけるビラが大っぴらに回ってるのに治安部隊は何をしているのだろうか。とにかくサオガスで何か起こってるのは間違いない。イサはサオガスへ急いだ。
反乱決行日、イサは町の入り口のそばにある馬屋に馬を預けてサオガスの町へ入った。サオガスの町でイサが見たのは驚くべき光景だった。道も広場もそこらじゅうゴミだらけなのだ。また、建物の壁が落書きだらけなのである。そこら辺を歩いていた30歳ぐらいの男性にとりあえず声をかける。
「ちょっとごめん、反乱はもう起こったの?」
「いいや、これからだよ」
「この落書きとかゴミは何?」
「3ヶ月ぐらい前から急に増えだしたんだ。困ったもんだよ」
「……反乱を起こそうって言ってきたのは誰なの?」
「わからないけど、ビラが回ってきたんだよ」
「今の税率ってどれぐらい?」
「それがひどいんだ。7割も取るんだよ。月2回に分けてくれるのはいいけどさ」
それだけ言うと男性は行ってしまった。明らかにおかしかった。まず3ヶ月前から急に増えたゴミと落書き。3ヶ月で急に町中がゴミだらけになるなんてことがあり得るだろうか。また、異常に高い税率。ここの領主はそんな圧政を敷く人物ではない。むしろ温和な優しい人間である。
イサはとにかく領主のグインルに話を聞こうと馬を走らせた。領主の館は馬で15分ほどのところにある小さな丘の上に立っている。イサは領主の館に着くなりその異変に気づいた。庭が荒れ放題なのだ。草がぼうぼうに生えていて、ゴミも大量にある。イサは不審に思いつつも馬を降り、とりあえず中に入ってみることにした。
イサが中に入ってまず気になったのは館じゅうに漂う異臭である。何かが腐ったような臭いがする。臭いを辿っていってみると、キッチンから臭ってきているようだ。キッチンの扉を開けた途端、イサは目を疑った。大量の腐った肉、野菜、洗ってない食器、捨ててない残飯。キッチンは荒れ放題だった。グインルは無事か、そう思いつつ館の中を走り、かたっぱしから部屋を開けていく。イサはまた異変に気づいた。だれも居ない。執事もメイドも側近もだれも居ないのだ。イサは館を駆けまわりながらグインルを探す。――館じゅう探しまわった結果グインルは居た。地下室の奥に。泣きながら震えていた。
「グインル! 私だ! わかるか?」
イサはグインルに駆け寄る。グインルは怯えて剣を抜いた。ガチガチと震えている。
「グインル、思いだせ! 帝都の宮殿で会っただろ!」
そう言われてグインルはハッとして思い出したようで剣を捨ててイサにしがみついてきた。
「グインル! どうした!?」
「わからない……。もう、何がどうなっているのかわからない……」
グインルはわからない、わからないと繰り返して泣くばかりだった。
「グインル、順を追って話せ」
グインルはグスグスと泣きながら話し始めた。
「最初は税率が3割だったんです。そしたら領民が5割は高いと言い出して、何のことかわからずに、3割しか取ってないと言っても5割取ってるの一点張りで、仕方なく2割に下げたんです。そしたら今度は6割は高いと言い出して、下げていくたびに向こうは上がってるって言ってくるんです」
「それで治安部隊が維持できなくなったわけか」
「……はい、税収が無くなって、警察も行政も全てマヒしてしまって。館の人員も整理せざるを得ず、この有り様で。今日、反乱が起こるというビラが回ってるし、もう、どうしたらいいのか……」
「兵力はいまどれぐらい残ってる!?」
「最低限の守備兵として兵舎に重装歩兵を100人だけ……」
100――この規模の町なら反乱に参加するのは多くても500。統率の取れてない素人なら行ける。イサはそう思った。イサ1人でも全滅させられる数ではあるが、全員をいっせいに全滅させることは出来ないため、こちらも守備兵の運用が必要だった。
「グインル、その兵を私に貸せ。お前はここに隠れてろ」
「……はい、わかりました」
イサは館の立っている丘の上に兵を展開し、走れるように3人の兵の鎧を脱がせ斥候として町に派遣した。陣形は縦10人、横10人の密集陣形である。
(しかしわからない、なぜここの連中だけ反乱を? 現にレデイスの町では反乱の兆候など無かった)
イサは首を傾げながらそう考えていた。そんなことを考えてるうちに斥候の1人が息を切らして走ってきた。
「申し上げます! 反乱軍の進軍が始まった模様です!」
「数は!?」
「およそ800!!」
(思ったより多い……)
イサは急いで丘を下り、馬で町へ続く道を走って敵軍の進軍の様子を見に行った。そして進軍の様子を見てイサは仰天した。縦隊に隊列を組んで整然と進軍しているのだ。
(なぜ、指揮官も居ない烏合の衆が隊列なんて組める!?……くそっ、一体何が起こってる)
自軍に戻る途中に上空を見て更にイサは仰天する。飛んでいるのだ――矢が。矢がどんどんイサの軍に吸い込まれていく。後ろを振り向くと反乱軍は丘の手前で横隊に陣形を変え、後衛に弓兵、前衛に歩兵を据えていた。
(これは絶対に素人の戦い方じゃない。たぶん傭兵が混じってる)
イサが軍に戻ると、兵たちは弓による攻撃を受けて浮き足立っていた。
「うろたえるな!! 落ち着け!!」
イサが馬上から叫ぶ。
「矢は鎧と盾で防げる! 今すぐ敵、左翼に突撃しろ!」
イサの号令と共に重装歩兵たちが敵の左翼に向けて進み始める。重装なので速度は遅い。そしてイサは馬で先陣を切って敵の右翼を突いた。剣を抜き馬上から凄まじい早さで敵の首を跳ね始める。敵軍も突撃を開始するも、右翼は完全にイサ1人に抑えられていた。馬で敵の横隊に沿って右に左に駆けながらまるで鎌で草刈りでもするかのように首を跳ねているのだ。
(歩兵は完全に素人ね……。町人たちが歩兵になっている)
イサは思った。敵兵を見ると普段着のまま斧や棍棒で武装した町人たちだった。統率が取れてると言っても所詮は素人の集団なので前の敵を攻撃するぐらいしかできない。敵左翼の歩兵たちははるか前方にいる重装歩兵たちに向かって突撃した。右翼をイサに抑えられ、左翼は前方の重装歩兵に突撃するので横隊がぶつ切りになり、右翼と左翼が完全に分かれた。ここでイサは馬を反転させ敵の左翼を後ろから突く。これによって左翼の歩兵は前と後ろのどっちを攻撃したらいいのかわからず大混乱に陥った。右翼の歩兵は仲間を助けるべきだという者とあれは左翼のやつらの敵だという者に別れ、陣形が霧散してしまった。こうなるともう烏合の衆と同じである。
(これでいけるかな)
イサがそう思ったそのとき斥候がイサに近づいてくる。
「申し上げます! 後衛に居た傭兵部隊が弓から近接武器に切り替え、我軍の側面を突いております!」
(くそっ、これは指揮官を討たないとやられる。指揮官はどこ!?)
イサは右往左往する敵兵の中を馬で駆けまわって探すがそれらしき人物はどこにも居ない。そのとき、イサの目に2~3人の傭兵の動きが目に入る。彼らはこそこそと周りを伺いながら丘の麓にある森に入っていく。
(あそこか!)
イサは森へ駆けた。森の中に突撃すると、1人の傭兵が陣を張り地図を広げて見ている。イサは馬に乗ったまま剣を抜くと一気に傭兵の首を撥ねた。
(こいつも傭兵か……。そもそも何で傭兵が反乱を指揮するの? 町人が金を出し合って雇った? いや、そんなのでこんな数を集められるわけないし、そもそも重税だし。……重税?)

――下げていくたびに向こうは上がってるって言ってくるんです。
――月2回に分けてくれるのはいいけどさ

「あ、ああ! 分かった!」
反乱の首謀者は月に1回のグインルの徴税が行われた後、手下の者をザオガスの町人の家に行かせ税取り立て人を装って徴税が月2回になったと騙し、金を取ったのだ。このことによって傭兵を雇う資金を集めると同時に町人の不満を煽ったのである。首謀者はいきなり税率を跳ね上げると怪しまれるため、徐々に上げていったのであった。そして、町中のゴミと落書きも首謀者が意図的に行ったものである。これによって町人のモラル意識が低下し、領主に反抗するという犯罪を犯しやすくなる、また、治安も悪化し、町人の不満が余計に募るようになる。
(こんなの普通の人間のやり方じゃない。たぶん反乱工作の専門家が首謀者)
イサは急いで森から出た。そこで見たものは自軍を全滅させ、館へ突撃する敵軍の姿だった。
(くそっ、ダメだ、落ちた。……ごめんグインル)
イサは町へ向かって駆け出す。せめて首謀者が町を掌握するのだけは防がないといけないのだ。反乱成功の前例を作ってしまったら各地で頻発してしまうのである。
イサが町へ入ると、通りや広場には誰もいなくなっていた。どうやらみんな反乱に巻き込まれまいと家に篭っているらしかった。イサは片っ端から家屋を開け、反乱に参加してない町人が居ないか調べた。鍵がかかっている家を見つけ、前蹴りで扉をぶち破るイサ。中には震えてる1組の夫婦が居た。
「怯えないで。聞きたいことがあるの。答えてくれたら何もしない」
イサは反戦のビラは誰が配っていたかと聞いた。夫婦は知らないうちに扉に貼られていたのでわからないと答えた。イサは同様の方法で次々に町人に同じ質問をしていった。3軒連続で知らないという答だったが4件目で知ってる人物が現れた。
「朝早くにマオゲが配ってるの見たよ」
「マオゲって誰!?」
「ス、スラムの一番奥に住んでる男だよ」
イサはそれを聞くなり、スラムへ駆け出した。スラムの一番奥へ行くと、一際ボロくて小さい家があった。イサは扉をぶち破ると中にいた30歳ぐらいの小さい男に駆け寄り、胸ぐらを掴んだ。
「ビラは誰に配れと言われた!?」
「な、何のことだ?」
「ビラを配ってたのあんたでしょ!?」
「知らねえ」
イサは大内刈りでマオゲを倒すと、上から押さえつけ、剣を膝に突き刺した。悲鳴を上げるマオゲ。
「動くと余計痛いよ」
イサは剣をグリグリと回している。のたうち回り、余計に足がズタボロになるマオゲ。
「もう一方もやろうか?」
「わかった! 言う! 言うからやめろ! 酒場の隣の空き家にたむろってた連中に言われたんだよ。金くれるって言うか……」
イサはマオゲの首を撥ねると空き家へと走った。空き家は閉まっていた。扉をぶち破るイサ。――しかし、中はもぬけの殻だった。
(居ない……逃げた? 館は落ちたのに?)
館をくまなく探索すると、机の上にある1枚の紙切れを見つけた。

『今回は譲ってやるよ、陛下。 クドナヴェフ』

「……クドナヴェフの仕業だったのね」
クドナヴェフとは公安局がマークしている革命家の1人で最も危険とされている男である。イサが来ていると知り、すぐに逃げたのだ。

その後、首謀者を失った反乱軍は暴徒と化し、町を襲い始め、無秩序状態に陥った。イサは即座に伝書鳩で近隣の領主たちに治安部隊の出動を要請。1週間後、馬に乗って部隊が到着した。部隊の活躍で暴徒たちは鎮圧され、町は平穏を取り戻し、この領地は帝国の直轄領とすることで決着がついた。こうして反乱は失敗に終わった。

イサはグインルの墓に花を手向け、この町を後にした。

あとがき

みなさんいかがでしたでしょうか。

この話もわりと好きな話ですね。1日で思いついて書いたわりには上手く書けたなぁと思ってます。

イサは戦術的には負けてしまいましたが、意外と色んな所で不本意な結果になったり、負けたりしてるんですよイサも。

世の中そうそう甘くないですね。

でね、明日の8話なんですけどね。まだ書きかけなんですよ。それでちょっと明日に間に合うかが微妙なので、期待しないで待っててくださいw

では、この辺で。

See You!

コメント

  1. ハルカ より:

    クドナヴェフが次に出てくるのが楽しみ♪

    • てっかまき より:

      クドナヴェフは明らかな伏線やね。後日に出すつもりで書きました。出てくる話はまだ書いてないけどw