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【小説】魔神系非モテ女子の戦い・第15話

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第15話 日本の悪魔は変人ばかり!(前編)

「だいたいさ、世の中、恋愛恋愛言い過ぎなのよ」
Bar Satanにていつものように沢村が奈央の愚痴を聞いていた。
「どいつもこいつも、男! 男! 男! ばっかじゃないの?」
奈央はウィスキーを飲みながら、くだを撒いている。
「ぜんっぜん、うらやましくなんか無いんだから! ブッサイクな男ばっかり捕まえやがって」
沢村は何も言わずにカクテルを飲んでいる。
「ちょっと忍、聞いてんの?」
奈央は座った目で沢村を睨む。
「あ、うん……」
沢村は結婚を前提に付き合っている彼氏がいることなどとても言えないと思った。もし結婚することになったら奈央にどう説明しようかと途方にくれていた。

そんなことを言っていると意外な男が店に入ってきた。
「ワイルドターキーの8年をストレートでくれ。ダブルでな」
その男は奈央の隣にドカッと腰掛けるとタバコに火を点ける。
「あ、あんたこんなとこで何やってんの!?」
奈央はその男を見てすっとんきょうな声を上げた。
「なんだ? 酒を飲みに来たらいけないのか?」
その男は杉原であった。杉原は出てきたバーボンを一気に飲み干すとぶふーと酒臭い息を吐いた。
「酒を飲みにきたらって、わざわざこの店を選ぶってことは何かあるんでしょ? 私なにもしてないわよ」
奈央はすっかり酔いが覚めた。タローマティの一件のことかと身構えた。
「……実はお前に相談があって来た」
「相談?」
奈央は眉間にしわを寄せて尋ねる。
「昨日逮捕したやつのことで難儀していてな」
「そんなの私に相談してどうすんのよ」
奈央はタバコに火を点ける。
「……単なる不法侵入なんだがな。どうもお前らのお仲間が関係してるらしいんだ」
奈央は沢村と顔を見合わせる。
「どういうこと?」
「昨日の夜中、足立区にある神社に上野健太って男が忍び込んだ。宮司の通報で逮捕したんだが、こいつがサタンミリティアの人間を呼べの一点張りでな。普通の人間は弁護士を呼べって言うんだが、こいつはそう言うんだ。その言い方が鬼気迫っていてちょっと普通じゃないんでな」
「それで私を呼びに来たってこと?」
「ああ。これは普通の人間の事件じゃないなと」
「なんでそう思うわけ?」
「長年のデカの勘ってやつよ」
奈央は再び沢村の顔を見る。
「人間の依頼受けるのってどうなんだっけ?」
「規約には書いてないけど、最近、人間への窓口も作ったらどうかって話が上のほうで持ち上がってるから試験的にやってみてもいいと思うわよ。上には私から話通しとくから」
奈央は再び杉原を見る。
「で、金はいくら出せんの?」
「10万だ」
奈央は力無くため息をついた。
「……話にならないわね。帰って」
「待ってくれ! これでも奮発したほうなんだ! 経費で落とすにはこれが精一杯だ」
「いいじゃない。やってやれば?」
沢村が助け舟を出す。
「はぁ? 冗談でしょ。なんでそんなややこしそうな事件を10万ぽっちでやらなきゃいけないのよ」
「さっきも言ったように人間への窓口を作ろうとしてるの。これはいいサンプルになりそうだわ。やりなさい。命令よ」
それを聞いた奈央は顔をしかめてむくれた。

翌日、東京都足立区。綾瀬警察署。
「……あいつが不法侵入したってやつ?」
「ああ」
取調室をマジックミラー越しに見ながら奈央と杉原が話している。取り調べを受けているのは、ダサいメガネにチェックのシャツ、安っぽいジーパン、バンダナ、絵に描いたようなアキバ系のオタクである。見たところ完全黙秘しているようだ。
「とりあえず話してみるわ」
杉原は取り調べをしていた刑事をはけさせると奈央を中に入れた。
「どうも。サタンミリティアの秋月よ」
奈央は向かいの椅子に腰掛けた。
「……本当にサタンミリティア?」
男はいぶかしげに奈央を見ている。奈央は革のケースに入った証票をそれこそ警察手帳のように見せる。それを見るなり男の眼の色が変わる。
「たのむ! オオクニヌシを止めてくれ!」
いきなりそんなことを言われて奈央は何のことかわからず聞き返した。
「落ち着いて。順を追って聞くから。……まずあなたは誰?」
「……雷神タケミカヅチ」
「それを証明できる?」
奈央がそう言うと、机の真ん中に小さな雷が落ちた。
「……どうやら本当みたいね。で、なんで神社に入ったの?」
「ゴズテンノウの起動を止めるため」
奈央の眉間にしわが寄る。
「ゴズテンノウの起動?」
「はい」
奈央は首をかしげた。
「どういうこと?」
「オオクニヌシの封印が解けてしまって」
「ちょっと待って。整理させて。……ゴズテンノウってオオクニヌシが作った兵器よね?」
「そうです。」
「それの封印が解けてゴズテンノウを起動させようとしてるってこと?」
「はい」
「でも、オオクニヌシは自分から引退して封じられたんじゃない。なんで今さら?」
「今のこの国の腐敗しきった状況をなげき、いっそ滅ぼしたほうが良いと」
奈央は頭を抱える。
「……どいつもこいつも似たようなことを」
「それで、オオクニヌシを止めようと、綾鷹神社へ赴いたわけです」
「そこにゴズテンノウの御霊があるんだっけ」
「そうです」
奈央はため息をつき、タケミカヅチをじっと見据えた。
「気持ちはわかるけど人間に迷惑かけるのはやめろよな」
「はい。すみません」
「……ゴズテンノウの件は私がなんとかするから、あんたは自分の犯した罪を何とかしな。人間の刑事には賽銭を盗もうと思ったとでも言っときなさい」
「わかりました」

奈央は警察署を後にするとすぐに綾鷹神社へと赴いた。小さな石の鳥居に小さな社。どう見ても地域密着型の普通の神社である。奈央は宮司に事情を話したが、宮司はここには御霊など無いの一点張りであった。
(仕方ないな)
奈央はそう思い、手刀で宮司を気絶させ、中に入った。すると、女が1人ご神体であるゴズテンノウの像に向かって正座し、祈りを捧げている。今風の格好をした髪の長い普通の女である。
「誰?」
その女はこちらを振り返らずに尋ねた。
「サタンミリティアの者よ。あなたこそ誰なの?」
「私はクシナダヒメ。タケミカヅチに言われて来たの」
「何をしてるの?」
「オオクニヌシによって起動されたゴズテンノウを抑えてる。でも、もう限界。あと1日ぐらいしか持たない」
奈央は焦った。もう起動しているのだ。しかも、あと1日で動き出すという。
「どうすれば止まるの?」
「オオクニヌシが持ってる制御器で停止させれば止まるわ」
「オオクニヌシはどこにいるの?」
「わからない。でも都心にはいると思う」
奈央は厳しい顔をして舌打ちをすると、クシナダヒメに言った。
「何か特徴とかある? 服とか」
「……トレンチコートを着てる」
「私が探してくるから、それまで何とか踏ん張って」
奈央は神社から飛び出し、車に飛び乗った。

(探すと言っても全く当ても無いし、どうしたらいいのか……)
奈央は途方にくれていた。
(でもコート着てる人とかまだ居ないから目立つのは目立つけど)
奈央が信号待ちで車を停めたその時、コンコンと運転席の窓を叩く音がした。見てみると、1人の少女が立っている。10歳ぐらいだろうか。
「なに? 迷子?」
少女は何も答えない。
「ごめんね。お姉さん忙しいの」
そう言って窓を閉めようとしたとき、
「オオクニヌシの場所知ってるよ」
少女はそう言った。奈央は少女を怪訝な顔つきで見る。
「あなた何者?」
少女はニヤと笑う。
「……いいわ。とりあえず助手席に乗って」
奈央はそう言うと少女を助手席に乗せた。
(今はこの子に賭けてみるしかない……)

奈央は思い切りアクセルを踏み込んだ。

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作者コメント

タケミカヅチは電気の神様なので、ガジェットに精通してるオタクという設定です。あと、奈央がくだをまくシーンは自分で書いてて恥ずかしかったw