投稿の全記事数: 2,255件

【小説】竜帝の野望2-ブア島の大戦-・第2話

応援ポチよろしくおねがいします。
にほんブログ村 その他日記ブログ 無職日記へ
にほんブログ村

⇒第1話を読む。
⇒第3話を読む。
⇒第4話を読む。
⇒第5話を読む。
⇒第6話を読む。
⇒最終話を読む。

――895年4月14日。ジャルフの町。傭兵雇用所。

「おら!押すな押すな!まだ時間あるから!」

整理役の兵士が叫ぶ。傭兵の雇用は今日が最終日ということもあって雇用所は希望者でごった返していた。

「ちっ、ただ道場でちょっと習っただけの素人まで参加してきやがって」

レイガはいらついていた。今日はもう3時間も並んでいるのだ。

「はい、次のかた」

受け付けの兵士が明るくレイガを呼ぶ。

「次の方じゃねえ! いつまで待たせんだ!」

レイガが溜まったイライラをぶちまけるように怒鳴り散らす。

「まあまあ、そう言うな」

受け付けの兵士は明るく笑っている。

「ちっ、くそったれが」

「はい、ここに名前と年齢と傭兵歴と今までの戦果書いてね。書いたら実技試験の会場に行って」

「実技試験?」

レイガは眉間にしわを寄せて尋ねる。

「今回は精鋭が必要だから実技試験をクリアしないと雇用しないんだよ。……はい。じゃあ、この受験票持って行って。向こうが会場だから」

レイガは受験票を受け取ると面倒くさそうに頭を掻きながら会場へ向かった。会場は雇用所の隣の空き地だった。レイガは渋々空き地に入るとそこにいた兵士に受験票を渡す。すると兵士はレイガに片手剣を模した木刀を渡す。

「なんだこりゃ?」

レイガは呆気にとられた。

「試験ではこの木刀でうちの兵士であるミサレルロと勝負してもらいます。一本入れれば合格です」

「はぁ? そんなもんで精鋭かどうか判断すんの?」

12歳から傭兵をやって11年になるレイガからすると笑ってしまう話だった。戦場では1対多数の殺し合いが主なのに1対1の木刀勝負で精鋭を判断するなど愚の骨頂だと思った。

「くだらねえこと思いつくな役所ってのは」

そんなことを呟いているうちにどんどん勝負がついていく。ミサレルロという兵士はかなりの手練のようで不合格者のほうが多かった。

「1232番アーシェさん合格です!……次!1454番レイガさん!」

レイガが勝負に行こうとしてアーシェと呼ばれた女とすれ違う瞬間――

「あーっ、お前この間の暴力女!」

アーシェは先日酒場でレイガとケンカをした女だった。レイガはアーシェの腕を掴む。

「誰? あんた。やめてくれる?」

「ふざけるな!!」

アーシェはレイガをひょいと投げ飛ばして、プイッと会場を出て行ってしまった。

「こらこら! ケンカをすると不合格にするぞ! 1454レイガ! 早く来い!」

「いててて……。あの女おぼえてろよ」

レイガは頭を押さえながら木刀を拾ってミサレルロと対峙した。ミサレルロは上段に振りかぶって袈裟斬りを繰り出そうとした。その瞬間レイガは素早く横薙ぎの攻撃を繰り出し一本入れた。

「1454番レイガさん合格です!」

会場を後にしようとすると、入り口にいた兵士に呼び止められる。

「町の東口の外に宿営地を作ってあるから、そこで待機しててくれ」

兵士にそう言われ、レイガは宿営地へ向かった。

夕刻、雇用が締め切られたころ、宿営地には200人ほどが待機していた。今日、雇用に合格したのは15人ほどであるが、明日から行軍が始まるので2ヶ月間で雇用された傭兵が全て集合しているのだ。レイガがテントの中で休んでいると、テントの外から笑い声が聞こえてきた。何かと思って外に出ていると、1人の女傭兵が傭兵たちに笑われている。アーシェよりさらに小柄でショートカットの黒髪に浅黒い肌をしている。

「なんで皆さん笑うんですか!」

女傭兵は顔を真っ赤にして抗議している。

「どうしたんだ?」

レイガが輪の中に入って尋ねると傭兵の1人が答えた。

「この嬢ちゃんはよ。平和を守るために傭兵になったんだとよ」

傭兵は大爆笑している。レイガはフンと鼻で笑った。

「お前、名前は?」

「リュカです」

レイガはリュカに顔を近づけるとバカにするように言う。

「リュカちゃんよ。平和を守るために傭兵になったのなら金無しでやれ」

レイガの一言に大爆笑する傭兵たち。言葉に詰まるリュカ。

「あなたたちは平和が嫌いなんですか!?」

顔を真っ赤にして精一杯大声を出すリュカ。

「当たり前だろ。平和だと金が貰えないから戦争のほうがいいよ」

そう言ってレイガはテントの中に戻った。

――895年5月14日。ディルメース大陸西端

ジャルフの町から西端まで1ヶ月に渡る行軍が終わった。傭兵たちはさすがに実技試験を突破した精鋭ぞろいだけあって行軍で疲れてる者は居ない。――1人を除いては。

「なあリュカちゃんよ。こんなんで疲れててこの先どうすんだ?」

レイガはタバコを咥え、半笑いでリュカに言う。

「べ、別に疲れてません!」

しかし、明らかにぐったりと座りこんでいる。

「お前さぁ、どうやって実技試験受かったわけ?」

リュカは何やら考えていたが勝ち方がわからないため嘘が付けなかったのであろう。

「それは……相手の兵士さんが、たまたま転んで」

と、バツが悪そうに言った。

「へっ、お前と同じ部隊にならないことを祈るぜ。……ん?」

レイガはリュカの太ももに大きな傷跡があるのを見つけた。

「なんだこの傷? 包丁でも落としたのか?」

「これは前の戦場で」

レイガは思わず咥えていたタバコを落としてしまった。

「へ? おまえ戦場経験あるの? 戦果なんぼだったんだ?」

「そ、それは……忘れました」

レイガはリュカの肩をポンと叩いて言う。

「どうせゼロだったんだろ? 逃げまわってただけなんだろ?」

レイガはニヤニヤしている。

「もう! 何なんですか、あなた! からかわないで下さい!」

レイガは大笑いしながら言う。

「本当にお前と同じ部隊にならないことを祈るぜ」

この西端には比較的近い町村から傭兵や兵士が5000人集まった。この人員で先遣旅団が組織された。内わけは傭兵が1500人。兵士が3500人である。このうち兵士は兵士の連隊、傭兵は傭兵だけで連隊を組み、戦うわけである。この連隊を大隊、中隊、小隊、分隊、と組分けしていき、分隊が作戦行動の最小単位となる。傭兵連隊の指揮官のうち分隊長は傭兵にさせ、小隊長以上は兵士が担当する。配属は雇用が行われた時点である程度行われていたため、この時は自分の所属を教えてもらうだけで済んだ。

レイガが配属されたのは第304分隊であった。しかも一番経験のあるレイガが分隊長に任命された。だが、小隊長から配属表を貰ったレイガは愕然とすることになる。

meibo-ryutei

今日はこの海岸で野営して、明日船に乗り込んで移動するのである。野営は分隊ごとに1つのテントが割り当てられる。

普通の軍隊では男女が一緒に寝ると間違いが起こるだろうが、帝国軍では女兵士に手を出したら死刑という勅令をイサが出したためほとんど間違いは起こらない。

第304分隊のテント前では他の隊員が火を囲んで飲み食いする中、レイガが配属表をまじまじと見ていた。

(暴力女とヘタレ女が居るのはまあいい。それは配属だし、しょうがない。しかし、この年齢☓というのは何なんだ……)

「おいお前ら!」

レイガは言う。

「誰が誰かわからん。簡単に自己紹介しろ。性別は見りゃわかるから、名前と年齢と戦歴だ。あと何か言いたいことあったら適当に言え。んじゃあ一番下っ端のお前からな」

レイガはリュカを指さす。

「あの……リュカ、16歳、戦歴1年です。世界に平和をもたらすため頑張ります!」

リュカはガッツポーズをしてみせた。しかし、誰も何も言わず、飲み食いしている。レイガは目まいがした。こんなことで大丈夫なのだろうかと不安になった。

「ほら、隣のやつ!」

間を持たそうとレイガが急かす。

「ダム、18歳、戦歴3年、よろしく……」

普通で地味な目立たなそうな男である。

「ベルル、17歳、戦歴3年」

鼻で笑いながら言うベルル。生意気そうな男である。

「アル、21歳、戦歴7年、流派はジゲン流目録」

腕は立ちそうだが頭は固そうな武人タイプである。

「ラス、20歳、戦歴5年、たくさん稼ぎます」

こちらも地味で目立たない男だが、コメントからすると金好きなのだろう。

「シュアル、19歳、戦歴6年です。みなさんよろしく」

これはまた戦場に似つかわしくない美少年である。本当に戦えるのだろうかと全員が思っている。そこまで自己紹介した後、場がシーンと静まり返る。

「おい!次!そこの鶏モモ食ってるおまえだ!」

レイガがアーシェを指さす。

「アーシェ、戦歴11年、よろしく」

レイガが頭を抱える。

「おい、年齢は」

アーシェは何も言わない。

「おい、お前年齢を言え!」

「なに? 別に戦うのに関係無いでしょ」

「女性に年齢を聞くのは失礼ですよ隊長」

シュアルが爽やかな笑顔でレイガを諌める。

「いや、年齢はこの際いい。確かに戦うのに関係はない。俺が問題にしているのはなぜ年齢を書かずに採用されたのかということだ」

「アーシェさんは腕が立ちそうなので採用されたのではないですか?」

アルが剣を磨きながら言う。そのアルの言葉を聞いてレイガが異変に気づく。

「おい、お前なんで剣を持ってないんだ!?」

アーシェは何も言わない。

「おい!答えろ!」

「家に忘れた」

「はぁ!?」

「別に傭兵なんて相手殺せばなんでもいいでしょ。私は素手でやるよ」

「このバカ女! 戦場で素手で戦うやつがあるか!」

「腕前が見たいわけ? 前に1回見せたと思うけど」

アーシェが指をボキボキ鳴らす。

(2回だこのバカ女)

「鎧は持って来たんだろうな?」

レイガは嫌な予感がしながらも聞いてみる。

「鎧は苦い思い出があるから16歳のころから着てない」

レイガは案の定頭を抱える。

(鎧の苦い思い出ってなんだろう……)

ダムはりんごをかじりながら密かに思った。

その日の夜、みんなはよく眠っていたがレイガは眠れなかった。

この翌日、旅団は船に乗り込み、ブア島を目指すこととなった。

⇒第3話を読む