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【小説】竜帝の野望2-ブア島の大戦-・第4話

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――

「うーん、この剣は銀貨3枚ってとこかな。……あっ、この指輪すげえ。金貨2枚にはなるぞ」

野営地ではラスが数えきれないほどの戦利品を意気揚々と品定めしていた。

「どうやってそれだけの戦利品持って帰ったんだ。手が5本ぐらいあるのかてめえは」

ベルルが呆れ顔でエールを飲んでいる。

「おい、お前ら!」

小隊長のところから返ってきたレイガが火の前にドカッと胡座をかいて座った。

「今日の戦果を報告しろ。名前を呼ぶから殺した数を言え。……まずアーシェ」

「15人」

「じゅ、15人!?」

ダムが珍しく大声を上げる。

「姉さん、さすがですね」

アルがニヤッと笑う。

「恐ろしい女だな。しかも素手なんだろ」

ベルルが冷や汗をかきながら言った。

「おら! 私語すんな! 次、アル!」

「9人」

レイガは紙にメモを取っている。

「シュアル!」

「3人」

「ラス!」

「4人」

「ダム!」

「3人です」

「ベルル」

「4人だ」

「次! リュカ」

「あの……1人です」

みんなさすが精兵として集められただけあって1人で複数人を殺している。レイガの戦果が6人であるので8人で39人を殺したことになる。レイガは立ち上がると今の結果を小隊長に報告しに行った。

「しかし姉さんすごいですね。素手で15人なんて聞いたことありませんよ」

ダムが目を輝かせながら言う。アーシェはすました顔で鶏モモを食べている。

「姉さんって剣は使えないんですか?」

アルが剣を磨きながら言った。

「んー、昔は使ってたけどね……若かったなぁ、あの頃は」

アーシェはエールを飲みながら遠い目をしている。

「柔術の流派はどこですか?」

アルが再び尋ねる。

「我流。剣術の師匠はいたけどね」

「ほー、我流でそこまで強くなるとは」

「まあ、剣術も柔術も基本は同じでしょ」

アルは剣を磨く手を止めて感心している

「なんで剣を捨てたんだ?」

ベルルが横目で見ながら尋ねる。

「さぁね、昔のことだからもう忘れた」

「あの、アーシェさんはどうやってそんなに強くなったんですか?」

リュカは恐る恐る聞いてみた。

「なんで強くなったか? うーん、なんでだろ。いい師匠に巡り会えたからかな」

「どんなお師匠様なんですか?」

アーシェはムッとして一瞬黙った。

「あんたら、しれっと私の過去を洗い出そうとしてんじゃないよ!」

アーシェが怒鳴るとみんなそそくさと背を向けて飲み食いを続けた。

食事が終わった後、深夜未明。他の隊員が寝静まったころ。304分隊テントの中。

「……アーシェさん、起きてます?」

リュカは隣に寝ていたアーシェにひそひそ声で話しかけた。

「……もー、なに? いま寝始めてたとこなのに」

アーシェは鬱陶しそうに寝返りを打つ。

「すみません、あの、どうすれば敵を殺せるでしょうか?」

リュカはアーシェにアドバイスを求めた。アーシェは何も言わない。リュカが諦めて寝ようとしたとき、

「……あんた、相手の武器ばっか見てるでしょ?」

アーシェが向こうを向いたままボソッと言う。

「そ、そりゃ、武器が来たら死んじゃうから……」

「武器じゃなくて相手を見るんだよ」

アーシェはそれだけ言うと寝てしまった。

ニリラニス平野の戦闘が終結すると同時に竜帝国はゼレルシュ王国に正式に宣戦布告。同王国も帝国に宣戦布告した。

その後、旅団のうち兵士大隊はニリラニス平野に残り、傭兵大隊は北へ進軍した。斥候の報告で北に5日ほど行ったところにある”ラハトゥの丘”に1000人規模の敵軍が展開しているという情報が入ったのである。先遣旅団はニリラニス平野に本隊の上陸拠点を作ろうとしているので、すぐ近くに敵軍が居ると都合が悪いのだ。よって、拠点を作る前にこれを先に掃討に行くのである。

5日後、大隊は敵のいる丘の手前に居た。

「各分隊は突撃命令が下るまでそれぞれ隠れられる場所を探して隠れろ」

という中隊長の命令を聞き、304分隊は丘の手前の茂みの中に隠れていた。

「我々は敵を正面から突くわけですね」

アルが身を屈めながら言う。

「そうだ。6個ある中隊のうち俺ら含む4個中隊が正面突撃して、ある程度相手が疲弊した頃に向こうに潜んでる2個中隊が横を突く」

レイガが作戦を説明する。

「しかし、向こうは丘の上にいるからこっちが不利ですね」

シュアルが指摘する。坂の上から下ってくるほうが勢いがつくので有利なのである。逆に上って行くほうはしんどいので不利だ。

「俺らは相手を疲れさせるのが目的なんだ。死なないように守り主体でやってりゃいい」

そんなことを言ってるうちに不意にビューグルの音が鳴り響く。突撃の合図である。

「第7中隊! 前方、敵軍勢まで躍進距離200! 突撃!! 前へ!!」

中隊長の号令と共に一斉に雄叫びが鳴り響く。それぞれの小隊が隠れていた場所から飛び出した。敵めがけて全力で走る。敵もこちらの存在に気づいたようでビューグルが鳴り響いている。すごい勢いで敵がこちらに降りてくる。やはり丘の上にいると強い。

「アルはリュカを守れ。俺とアーシェが前だ。他は俺らのサポートだ。守り主体で行け。死ぬなよ」

2つの雄叫びが坂の真ん中でぶつかり合う。アーシェは全開で敵を殺しに行っている。防御に徹さなくても守りは完璧なので攻撃する余裕が有るのだ。レイガも全開で戦斧を振っている。前衛2人が全力で殺しに行くことで後衛が防御をしやすくなる。一方、リュカは横から迫ってきた1人の敵と対峙していた。

(武器じゃなくて相手を見る……!)

敵兵が剣を振り上げて垂直に振り下ろして来る。リュカは相手の動きをじっと見極めると横にスッとかわした。同時に相手の首目掛けて横薙ぎの攻撃を繰り出す。相手はそれを剣で受け、弾いた後、これまた横薙ぎの攻撃を繰り出してくる。リュカはしゃがんでそれをかわすと下から相手の顔を切り上げた。相手は顔を押さえながら垂直に切り下げて攻撃してくる。しかし、ダメージを負っているためか動きが鈍っている。リュカは相手の懐に飛び込むと心臓を突き刺した。血を吐いて絶命する敵兵。

(あれ? 意外と簡単かも)

リュカはなぜか肩透かしを食らったような気分になった。

「おい、アーシェ」

レイガは戦斧で敵兵の頭をかち割りながら言う。

「なに? いま忙しいんだけど」

アーシェは敵兵の手首を持って四方投げを繰り出しながら言う。

「お前、あいつに何言った?」

レイガはリュカを横目で見ながら言った。

「別に。ちょっと基礎を教えてやっただけ」

「基礎?」

「あの子見込みあると思うよ。1年やって戦場で死ななかったのは才能あるよ」

アーシェは敵の剣を白刃取りしてそのまま投げる。

「ほー、人に教えたことなんかねえからわかんねえな」

レイガがそんなことを言っていたとき、左横から背筋の凍るような殺気を感じ、反射的に右に飛び退いた。するとすごい速さの突きが宙を突いた。突いたのは不敵に笑っている1人の男である。

「アーシェ」

「なに? いま忙しいんだけど」

レイガはとっさに思った。これは自分が集中して対応しなければいけないと。

「代わりに指揮頼む」

アーシェもその男を一目見てレイガの言った意味がわかったようだった。

「あんたら! 今から私が指揮を取る! 言うこと聞かなかったらぶん投げるからね!」

みんな一瞬何が起きているかわからずに固まったが、とりあえず今はアーシェに従うことにする。

「アル! リュカのサポートはいいから前に出て! 代わりにダム! リュカとコンビで戦って! 必ず2人で1人を相手にしな!」

アーシェは的確に指示を出している。それを見てレイガは安心して前の男に集中できた。ニヤニヤ笑うその男は凄まじい勢いで袈裟斬りを繰り出した。レイガは後ろを体をずらして紙一重でよけつつ右から横薙ぎ気味に男の頭目掛けて戦斧を繰り出している。相手はレイガの戦斧をしゃがんでかわすと今度は突きを繰り出してきた。レイガは右に半身になってそれをかわすと今度は上から垂直に戦斧を振り下ろす。その瞬間、

「ちええええええええ!!」

横からその男にアルが斬りかかった! 戦斧と両手剣、両方を避けるのは無理。決まった。と思った瞬間、男はそばで戦っていた敵兵を掴んで引き寄せると盾にしてアルの両手剣を防ぎ、レイガの戦斧は自分が持ってる剣で打ち弾いて防いだ。盾にされた敵兵はアルの剣で真っ二つになった。レイガとアルが呆気にとられていると、敵軍が撤退し始めた。どうやらこの戦闘も勝利らしい。その男も不敵な笑みを浮かべたまま撤退しようとする。

「おい、お前!」

レイガが呼び止める。その男は足を止めて振り向いた。

「……名前は?」

レイガが尋ねる。

「シャルペナ……」

ニヤニヤ笑いながらそれだけ言うと、男は走って去っていった。

――

その日の夜。ラハトゥの丘、野営地。

「で、そのシャルペナって男は兵士なんですか?」

ラスが大量の戦利品を品定めしている横でダムがレイガに尋ねる。

「いや、身なりからして傭兵だろう」

レイガはエールを飲みながら淡々とした表情で答える。

「すまない……。俺に2人同時に斬れる腕があれば……」

アルが顔を歪めて拳で自分の膝を叩く。

「それは背負いすぎだよアル」

シュアルがスープを飲みながらアルを気遣う。

「許せない!! 自分の仲間を盾にするなんて!! 今度会ったら私が殺すから!!」

全員が大笑いするが、リュカは本気で怒ってるようだ。

「ま、それが戦場の現実ってこったな。狡いやつもいれば卑怯な奴も居る」

レイガがパンをバクリとかじりながら言う。

「あれ? そういや姉さんどこ行った?」

ダムが辺りをキョロキョロしながら言う。

「おしっこだろ。女は大変だよ。立ちションできねえからな」

ベルルがオートミールの粥を食べながら言う。その言葉にムッとするリュカ。

――同刻。帝都。宮殿バルコニー。

イサは夜風を浴びていた。何やら真剣な顔で考えている。そこにレリィが宮殿内から出てくる。

「陛下、上陸拠点確保の見通しがついたと宰相閣下から」

レリィは軽く頭を下げながら言う。

「そう。次は本隊のほうね」

イサは外を眺めたまま答える。

「あの……この辺でもうやめといたほうが」

レリィが上目遣いでイサを見ながら言う。

「やめるってどういうことよ。今さらやめられないでしょ」

「あのでも……」

「なんなの、あんた。いちいちうるさいなー」

「失敗して大損害なんてことになったら……」

「そんときはそんとき」

「あの方と連絡は取ってるんですか?」

「取ってないよ」

「え!? 取ってないんですか?」

「だって取りようがないじゃん。向こうから連絡がないとどこにいるかわかんないんだから」

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