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【小説】魔神系非モテ女子の戦い・第2話

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第2話 超美形!悪魔ベリアル様!

翌朝。奈央はあくびをしながら電車に乗っていた。基本的に奈央は二日酔いにはならないが、それでも飲んだ翌朝は眠い。武蔵溝ノ口駅で大量に乗ってくるサラリーマンたち。大量の人にぎゅうぎゅうに押されながら顔をしかめる奈央。奈央にとってこの世の中で満員電車が一番不快だった。会社の近くにすれば良かったなどと思いながら他の男たちと密着し、早く駅が来ないかと耐える奈央。

その時、さわさわと尻を何かが這うような感触。奈央の背中に悪寒が走る。痴漢である。実は奈央は痴漢にあうのはこれが初めてであった。男性経験もないのに尻を触られて固まる奈央。しかし、奈央は黙って触らせるような女ではない。尻を触っている手を掴み、ごった返す人の中で強引に後ろに振り向くと、

「やめんか下郎!!」

そう言って痴漢の頬を思いっきりひっぱたいた。その瞬間出た――炎が。奈央の手から炎が出たのである。何が起こったのかわからずに固まる奈央。髪をちりちりにして呆気に取られる痴漢。呆然とする周りの乗客。奈央は次の駅で痴漢を駅員に突き出すと、自分の手をまじまじと見てみた。

(確かに火が出たように見えたんだけど……私、まだ酒残ってるのかな)

奈央は改札を出ると会社に向かって歩き始めた。開発センターだけで従業員は2000人も居るため、ぞろぞろと同じ方向に歩いて行く人がたくさんいる。その中に混じって奈央は歩く。何度も首をかしげながら。

10分ほど歩いて会社に着いた奈央はロッカールームで作業着に着替えてエレベーターで上へのぼり、5階の廊下を歩いていた。まだ首をかしげながら手を見ている。セキュリティカードを居室のセンサーにかざして扉を開けると200人以上が仕事をする広大な居室に入った。自分の席に着いてバッグを置き、パソコンのディスプレイを点ける。まず仕事のメールチェックをするが、メールの内容は頭に入ってこない。奈央はまた自分の手をまじまじと見てみた。別に変わったところのない普通の手である。でも、炎が出た時の感触は覚えている。何か懐かしいような感触。あれは一体何だったのか、奈央は考えていた。

そのとき居室に始業開始5分前のチャイムが鳴り響いた。その後、トルペド体操の音楽が流れ始める。誰も体操する者などいないが。その時、

「秋月ちょっと来てもらえる?」

課長の黒井から呼ばれる。始業時間まで後3分あるのに、そんなことを思いつつ隣のブースにある課長の席に赴く。

「何ですか? 昨日勝手に帰ったことのお説教ですか?」

髪をガシガシいじりながら課長に話しかける。すると課長はパソコンの電源を切り、

「今から本社ビルに行くぞ。一緒に来い」
そう言って居室の出口に向かって歩き始めた。

「あ、ちょっと課長!」
黒井はスタスタと行ってしまった。まだ釈然としないのだが仕方なく課長を追いかける奈央。

奈央は黒井と一緒に社内シャトルバスで本社ビルへと向かっていた。着替えるのが面倒くさいので二人とも作業服のままである。開発センターは川崎市内にあるが、本社ビルは都内にあり、会社がシャトルバスを運行しているのだ。

本社に着いた奈央と黒井は正門ゲートをセキュリティカードで通り抜けると、ビシッと美しく刈られた芝生が印象的な広い中庭の舗装路を通り、C棟の中へと入った。エレベーターのスイッチを押すとちょうど扉が開いたので中に入る。黒井は5階のボタンを押した。

「あの、課長、ここで何するんですか?」
「社長に会う」
「ええっ、社長!?」
社長など入社式のときに壇上で長い話をしているのを見たきりである。まして直接話すなど初めてであった。奈央はなぜ自分が社長に会わなければいけないのかわからず不安そうな顔をしていた。

5階に着くとしばらく廊下を歩き、入ったことのない区画に入った。壁の木目が美しく、カーペットがふかふかなシックで高級感あふれる雰囲気の区画である。その一角に社長室はあった。中に入るとそこは30畳ぐらいある広い部屋だった。その中に入ってみるとデスクがポツンとあるだけである。しかしこれが大きくて立派な高級デスクなのだ。1個あるだけで十分な存在感を放っている。社長は高級デスクのそばに立ち、全面ガラス窓の向こうの外を眺めていた。

「秋月を連れてきました」
黒井がそう言うと、社長がこっちに向き直り、デスクに座る。

渡瀬晋太郎68歳。恰幅の良い体に高級そうなスーツ。就任時に赤字まみれだった会社を超優良企業にまで押し上げた凄腕の経営者である。

デスクに座った渡瀬は眼光鋭く奈央を見ていた。
「君が秋月君かね?」
「あ、はい……秋月奈央と申します。よろしくお願いします」
奈央は緊張しながら恐る恐る挨拶をし、丁寧にお辞儀をした。

「秋月君。単刀直入に言おう」
何を言われるのか、昨日勝手に帰ったからクビになるのか、などと思い、奈央は身構えた。

「……君はアスラだ」

奈央は何のことかわからず、黒井の顔を見た。黒井は真っ直ぐに渡瀬の方を見ている。
「あの……アスラって新しい役職か何かですか?」
奈央は渡瀬と黒井の顔を交互に見ながら尋ねた。
「まあ、実際に見てもらうのが一番早いだろう。……黒井君。」
「はい」

黒井は奈央の方に向き直ると、目をつぶった。奈央は何が始まるのかわからず黒井の方を不思議そうに見ている。

すると黒井からまばゆい強烈な青色の光が発せられた。まぶしさに顔をしかめ手をかざし後ずさる奈央。黒井の姿は完全に光によって隠された。社長室の床が小刻みにブルブルと震え、地響きのような音がする。そして次の瞬間、黒井が纏っていた光りがパンと大きく弾け、地響きは止んだ。

――黒井は決して美形というわけではない。若い頃はそれなりに恋愛はしただろうなという顔立ちではあるが、41歳になった今ではちょっと腹の出た、普通の中年男性である。

しかし、奈央が目を開けてみるとそこにはいつもの黒井の姿はなかった。そこに居たのは身長は180cmほどの美青年であった。20代前半ぐらいに見える。ラフな感じの多くて長いミディアムヘアに上半身は裸、下半身はボロボロの黒い腰布を1枚纏っている。そして背中に生えた大きく黒い4枚の翼。まず奈央の目を引いたのはその肉体美である。6つに割れた腹筋と程よく厚い胸板が美しい完璧な痩せマッチョ。細くて長い足に8等身のスタイル。そして、次に目を引いたのはその端整な顔立ち。切れ長の目に高い鼻、スッと通った鼻筋、細りとした顎。

奈央は目の前で起こった現象には目もくれずとりあえず目の前の美青年の肉体を目に焼き付けるのに必死だった。あの腰布の下はどうなっているのだろうか。そんなことを考えながらギンギンの目で青年を見ていると、青年は口を開く。

「俺は悪魔ベリアル」

奈央はその言葉を聞いたところで鼻血を出してぶっ倒れてしまった。

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作者コメント

奈央の働いている会社は著者が以前働いていた会社をモデルにしています。