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【小説】魔神系非モテ女子の戦い・第6話

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第6話 体術と魔法は楽しいな

――奈央がアスラの能力に目覚めてから2週間後。

凄まじいスピードで腕立てをしている奈央。
「よっしゃ! 20万終わった!」
立ち上がり両腕を上に伸ばして背伸びをする奈央。奈央は腕立て、腹筋、スクワット、それぞれ20万回を3時間で出来るようになっていた。タオルで爽やかな汗を拭う。何だか高校時代、大学時代の部活を思い出して懐かしくなってしまった。

「ほっほ、よくお出来になられましたな。体力はもう十分でしょう」
フルカスがヒゲを触りながら優しく笑う。
「そういや、フルカスさんの能力ってどんなのなんですか?」
「わしは哲学、修辞学、論理学、天文学、手相占いが得意ですのじゃ」
「ええっ、手相占い!? 私を占って下さい! 恋愛運!」
「よろしゅうございますよ。どれ、手のひらを」
フルカスに手のひらを見せる奈央。目を細めて手を眺めるフルカス。
「……これは最悪ですな。今後1万年は男のおの字も無いでしょう」
「い、1万年……」
目まいがしてくる奈央。

不意に倉庫のドアが開き、黒井が入ってくる。手には紙袋を下げている。
「あ、課長。お疲れ様です」
黒井に頭を下げる奈央とフルカス。
「基礎体力訓練のほうはどうだ? そろそろ良いんじゃないか?」
「はい、ベリアル様。もう、十分かと」
「では、戦闘訓練に入れ」
「はっ」

対峙する奈央とフルカス。黒井はその辺の床に座って見ている。
「最初は体術の訓練ですじゃ。わしに一本入れたら訓練終了ですじゃ」
持っている槍をシュンと消し、ファイティングポーズを取るフルカス。
「では、こちらから行きますぞ」
一瞬で間合いを詰め、ワンツーの後、右のボディブローを繰り出すフルカス。奈央は体勢を低くして左腕でボディブローをガードすると、そのまま腕を取り背負い投げを繰り出した。左手を着いて大きく宙返りして着地するフルカス。
「ほう……」
「ほっほ」
奈央の身のこなしに感心する黒井とフルカス。
「お前、何か武道でもやってたか?」
「私、おじいちゃんが柔道の師範で3歳のころからやってまして。あと、中学から大学までキックボクシング部でした」
「基礎は出来てるということか」
「これは期待できそうですな」

再び対峙する奈央とフルカス。フルカスは今度は間合いを詰めワンツーの後、奈央の顔面めがけて右のハイキックを繰り出した。奈央はスウェーバックでそれをかわす。次にフルカスは体を1回転させてもう一歩踏み込み、もう一度右のハイキックを繰り出そうとした。だが、奈央はフルカスが背中を見せた瞬間を見逃さなかった。瞬時に間合いを詰め、密着すると、気合いの掛け声と共に裏投げを繰り出す。フルカスは両手を着いて逃れようとしたが、ガッチリと固められた奈央の腕から逃れられず、後頭部からまともに床に激突した。軽く笑う黒井。
「一本だな」
黒井はパチパチと拍手をしている。
「いててて、こりゃキツイわい。アスラ様、もう少し手加減してくだされ」
「ご、ごめんなさい」
フルカスは後頭部を押さえながらよろよろと立ち上がった。
「まさか2戦目で負けるとは思わなんだ」
フルカスは奈央の一撃が相当効いたのかまだ後頭部を押さえて首をグリグリと回している。
「よし基本的な体術は出来てるな。もういいだろう。次は魔法だ。おい、フルカス」
「はっ」

フルカスが手のひらを上に向けると燃え盛る炎の玉が出た。
「こうするのですじゃ」
「フルカスさんも炎出せるんですか?」
「わしは火占術という火を使った占いをするのでそれに使うのですじゃ。戦闘に使えるレベルにはありませんが、見本にはなるじゃろう」
「フルカスの通りにやってみろ」
奈央は手を上に向けて息んでみるが何も出ない。
「何も出ないですけど……」
「お前が電車の中で出したときは痴漢に襲われてたんだろ? 魔法とは感情だ。魔法を使いこなすということは感情をコントロールするということだ。炎とは熱く燃える感情。何かお前が普段思ってる熱い感情を言葉にして思いっきり叫んでみろ」
「えーっと……」
奈央は思いっきり空気を吸い込んだ。

「男が欲しいぃぃぃ!!」

奈央の手にフルカスと同じような炎の玉が出た。
「うわっ、出た」
しかし、すぐに消えてしまった。
「それを維持できるようになれば、合格ですじゃ」
「よし。もう消えていいぞフルカス。あとは俺が教える」
「ははっ。では失礼致します。アスラ様、ご武運をお祈りしております」
そう言うとフルカスは青い馬に乗って消えてしまった。

――30分後。
「おどごがぼじいぃぃぃ……」
枯れた声でそう叫ぶと手のひらにライターほどの小さい火が灯る。
「ぼう、だべ……。ごべがでだい……」
「お前、ただ声だしてやってるだけだろ。重要なのは感情だ。感情をコントロールしろ。感情を。」

――4時間後。
「えいっ」
奈央の手に炎の玉が出る。5分ほど経っても玉は消えず燃え続けている。
「よし、それぐらい維持できればいいだろう」
「やった……! できたぁ!」
奈央は床に大の字に倒れこんだ。

黒井は紙袋から1冊の古ぼけた本を取り出すと奈央に差し出した。A4サイズぐらいある巨大な本で青紫色の固い表紙の真ん中には六芒星の魔法陣が描かれてある。本の厚みは10センチほどもある。
「何ですかこの汚い本」
「アスラの戦記の上巻だ。およそ600年前に書かれた」
「アスラの戦記?」
「227年前に死んだお前の前世のアスラ。その戦いの様子を記録したものだ」
奈央は1ページずつめくってみる。ページがすごく厚い紙で出来ている。そして、日本語ではない別の言葉で書かれている。行の歪み方から見て手書きのようだ。
「これ何語ですか? 見たことない文字ですけど」
「悪魔語だ」
「悪魔語……。そんなのあるんですか」
「ここを見ろ」
黒井はページをめくり、とあるページにある挿絵を指さした。顔が3つ、腕が6つある人間が剣を持って巨大な犬のような怪物と戦っている。
「これが前のアスラですか?」
「そうだ。ここの文章を見ると、こう書いてある。”アスラは手から燃える剣を出し戦った”、と」
「燃える剣?」
「そうだ。つまり炎から武器を作れということだ」
奈央は少し上を向いて考えた。
「あの……。私、素手がいちばん得意なので武器とかいらないんですけど」
「じゃあ、炎を拳にまとわせて戦えばいいだろ。炎のグローブだよ」
「なるほど! 炎のグローブか! やってみます。……えいっ」
しかし、奈央の拳の中に炎が出来てしまった。
「あら? じゃあ、こうか、えいっ」
奈央の拳が周りに炎をまとった。
「できた! ……これが炎のグローブ」
「これを見ると”炎刃”と書いてある」
「えんじん?」
「ああ。炎に刃物の刃で炎刃だ。お前の場合、拳だから炎拳かな」
「炎拳……。なんか中二病みたい」
「この本をやるから、翻訳して戦い方を勉強しろ」
「ほ、翻訳って辞書も無いのに出来ないですよ」
「辞書ならある」
黒井は紙袋からもう1冊本を取り出した。今度は新しい本で一見普通の辞書に見える。
「塔文堂、明解悪和辞典?」
「戦記の下巻のほうも探したんだが、見つからなかった。とりあえずは上巻だけでいいだろ」
「課長の特訓はもう終わりなんですか?」
「体力もつけた。物理的な戦い方も教えた。魔法も教えた。あとは実戦しかないな」
「実戦?」
黒井は作業着の胸ポケットから4つ折りにされた小さい紙を取り出した。奈央が見てみると住所と名前らしきものが3人書かれてある。その下には住所とともに”梓堂”と書かれてある。
「それは俺の知り合い3人だ。話は通しておくから、その3人と戦って勝て」
「はあ、大丈夫でしょうか」
「お前次第だ。……それから、悪魔関連の古書を専門に扱ってる店も書いておいた。必要な本があったらそこで買え。下巻も出回るかもしれないからちょくちょく確認しろ」
「はい。……わかりました」
「会社のことは傷病休職ということにしておく。お前は鍛錬に全力を注げ」
「……わかりました」

こうして基礎訓練は終わりを告げた。いよいよ実戦訓練に入る。

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作者コメント

修行回終わりです。次回から戦闘が始まります。