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【小説】魔神系非モテ女子の戦い・第7話

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第7話 速すぎるでしょパズズさん

「はあ~」
訓練が終了した夜、奈央は大きくため息を付いた。相変わらず汚く散らかした部屋でテーブルの上にアスラ戦記と悪和辞書、それからコンビニで買ってきたノートを広げ、翻訳作業を行っていた。
(この年になってこんな受験生みたいなことするとは思わなかったな……)
奈央がまず訳したのは目次である。まずこれを訳し、戦いに役立ちそうなところから訳そうと思ったのだ。

――――
インドラの軍勢との戦いに至る経緯
ドゥリタラーシュトラとの戦い
ヴィルーダカとの戦い
ヴィルパークシャとの戦い
ヴァイシュラヴァナとの戦い
天帝インドラとの戦い
アスラの技そして魔法の特徴
――――

(よし! 目次は訳せた)
辞書によると悪魔語は文法としては英語に近く、主語、動詞、目的語の順番から成る。ただし、発音というものが無く、書くためだけに作られた言語だそうなのだ。では言葉によるコミュニケーションはどのように行っていたかというと、それは人間の言葉を使っていたと。悪魔語は悪魔の秘密を人間に知られないように作られたと書かれていた。
(……そのわりには辞書とか充実してる気がするけど)
奈央はとりあえず一番役に立ちそうな最後の技と魔法の特徴から訳すことにした。

――――
アスラが天帝インドラとの戦いで主に用いた魔法
炎刃
千炎刃
雷刃
羅門信炎閃槌弾
激王炎獄波
雷打光焔速滅陣
雷心閃動殺
――――

(とりあえず名前だけ訳したけど……。中二病くさ……)
奈央は炎刃(炎拳)はもう出来てるので、その下に書かれている千炎刃について訳すことにした。

――――
千炎刃とは6本の腕を効果的に利用して相手が反応できないほど素早い速度で連続して斬り付ける魔法技
――――

(6本の腕を効果的に……。私、腕2本しか無いしなぁ)
奈央はそこまで訳したところで眠くなったので、その日はもう休んだ。

翌朝10時すぎ、奈央は世田谷区の住宅街を歩いていた。黒井から教えてもらった悪魔のところで実戦の修行をするためである。
(東京都世田谷区赤池7丁目……。ほんとにこんなとこに悪魔なんかいるのかな)
見たところ普通の住宅街である。奈央はアイフォンに写したグーグル・マップを片手にキョロキョロしながら住宅街を歩いていた。
(7丁目2-24、ここだ)

そこに立っていたのは小さいアパートであった。見たところかなり築年数が経っているように見える。15年ぐらいだろうか。お世辞にもおしゃれとはいえないアパートである。ここの105号室に悪魔が住んでいるというのである。奈央が105号室の入り口に近づこうとしたとき、ちょうどそこの住人が出てきて、ドアに鍵をかけた。出かけるのであろうか。

「あのー、すみません、西村薫さんですか?」
「はい、そうですけど?」

住人は目を丸くして奈央を見ている、男性である。年の頃は20前後。長身、細い体型に細い顔。黒い縁のメガネをかけている。白いTシャツに安っぽいデニムパンツ。肩から下げた布製のバッグ。見たところ大学生のような風貌である。

「あの、黒井和也の紹介で来たんですけど」
それを聞くなり西村の表情がとたんに明るくなる。
「あー! あーあー! 聞いてますよ。アスラさんでしょ? 実戦の修行がしたいとか」
「はい、そうです。でも、今からお出かけですか?」
「いやいや、いいんですよ。ちょっと図書館に行こうとしてただけですから。戦う時間ぐらいありますよ」
「すみません。ご迷惑かけて」
「いえいえ。ここの通りの裏に人通りの少ない公園がありますからそこでやりましょう」
2人は公園に向かって歩き始めた。

「へー、大学生なんですか」
「はい。人間の学問を勉強したくて」
「何学部ですか?」
「工学部です」
奈央の表情が明るくなる。
「えー! 私も工学部出身なんですよー」
「そうなんですか! 何を勉強されたんですか?」
「私は情報工学を」
「僕は機械工学を勉強してるんです。将来ロボットが作りたくて」

そんなことを話しているうちに公園に着いた。滑り台とブランコと公衆トイレがあるだけのごく小さい公園である。確かに公園の入り口が面しているのは目立たない細い道で周りは生け垣で囲われているので人目にはつかなそうだ。公園の真ん中で対峙する2人。
「じゃあやりますか」
西村は首をコキコキと鳴らしながらトントンと軽くジャンプし、体から緑色のまばゆい光を発した。

光の中から現れたのは黒いたてがみに大きく尖った耳、鋭いクチバシ、赤い目、4枚の黒い翼を持った人型の怪物だった。全身が白い体毛に覆われていて、赤い腰布1枚を身につけている。しかし、体は小さい。身長150センチぐらいだろうか。右手に短刀を持っている。

(こりゃまた悪魔っぽいのが出てきたな……)
奈央はそう思い、両手に炎拳を発動した。
「僕は悪魔パズズ。では行きますよ」

奈央が半身に構えると同時に、パズズは両手から衝撃波を放った。威力自体は全く無く、ただ体に衝撃が来るだけだったが目眩ましには十分だった。奈央が衝撃波に気を取られている間にパズズは居なくなっている。どこだと思って奈央が辺りを見回すと、頭上からパズズが凄まじい勢いで急降下し、短刀で斬りつけてきた。間一髪バックステップで避ける奈央。

パズズは地面に着地すると再び上空にすごいスピードで飛び上がり、奈央の上空を旋回している。奈央が驚いたのはそのスピードであった。まるで弾丸のような速さで公園じゅうを飛び回っている。

やがてパズズは飛び回りながら奈央に向かって真空で出来たカマイタチのような波動を発した。これも大した威力はない。体に2、3箇所、浅い切り傷が出来て血がにじむぐらいである。だが、やはり目眩ましにはなる。奈央はまたパズズの位置を見失ってしまった。

と、思ったら後ろから風切音が聞こえる。その瞬間、奈央は反射的に前転をし、身を守った。案の定、前転をしている奈央のすぐ上をパズズが凄い勢いで通過していった。

パズズが速すぎて奈央は全く攻撃が出来ない。奈央はとっさにジャンプして4メートルぐらい後ろに下がると、公衆トイレの中に入った。そして、入り口に向かって半身で構えた。パズズはいよいよ止めを刺さんとばかりにトイレの入り口目掛けてすごい勢いで水平に飛ぶ。そして再び衝撃波を繰り出した。目が眩む奈央。奈央の首目掛けてパズズが迫る。

しかし、パズズが逆手に持った短刀は奈央の首の一寸手前で止まった。逆にパズズの顔にめり込む奈央の炎拳。パズズはそのまま崩れ落ちると目を回して気絶してしまった。

奈央はパズズの攻撃の方向を限定するためにトイレに入ったのだった。トイレの中にいれば入り口から真っ直ぐ入ってくるしか攻撃の方向が無くなる。確かに衝撃波には目が眩むが、距離と方向さえわかれば攻撃のタイミングは掴める。奈央はそれによって、右手で短刀を持って首を掻っ切ろうとしてくるパズズの顔面に左のストレートを炸裂させたのだった。弾丸のようなスピードで奈央のストレートに突っ込んだパズズは甚大なダメージを負った。

「あたたたた……。死ぬかと思った」
「大丈夫ですか?」
西村の姿に戻ったパズズと一緒に公園のベンチに座っている奈央。傍らには西村が家から持って来た救急箱。
「あれはキツイです……。人間が開発した技ですよね。クロスカウンターでしたっけ」
「ええ、そうです」
「悪魔の魔法と人間の技を複合してくる奴なんかいませんからアスラさんは驚異的ですよ」
そう言いながら顔面のヤケドに軟膏を塗る西村。
「でも、トイレ無かったら私負けてました」
「はぁ……。別の場所を選べば良かった……」
ため息をつく西村。こうして奈央の初戦は勝利に終わったのだった。

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作者コメント

バズズ(bazuzu)じゃなくパズズ(pazuzu)です。ドラクエの人は間違えないようにw あと、作中に出てくる住所は実際には存在しない架空のものです。