投稿の全記事数: 2,163件

【小説】魔神系非モテ女子の戦い・第12話

応援ポチよろしくおねがいします。
にほんブログ村 その他日記ブログ 無職日記へ
にほんブログ村

⇒第1部を読む
⇒第11話を読む
⇒第13話を読む
⇒第14話を読む
⇒第15話を読む
⇒第16話を読む

第12話 厄介な男登場(後編)

パールヴァティに会ったあと、奈央はタローマティに会うためにあきる野市へと向かった。あきる野市へは1時間半ほどで着いた。指定された山中に入り、廃屋と化した山小屋へと赴く。生い茂る山林。山独特の木の匂いが鼻につく。昨日雨が降ったせいか、地面は湿っており歩くとぐにゃぐにゃする。山小屋は舗装された道路から歩いて15分ほどのところにあった。

奈央が静かにドアを開けてみるが、誰もいない。中に入ってみると、ごく最近に生活した形跡がある。奈央は慎重にしばらく小屋の周りを見まわってみた。特に不審な点は無い。

奈央がもう1度小屋に戻ると彼女は居た。タローマティである。悪魔の姿であり、人間の姿ではない。長い黒髪に美しい顔、凛とした表情をしている。そして茶色の全身鎧を身につけている。女性用の鎧で体のラインが強調されるような形状であり、妖艶な雰囲気を醸し出している。そして、背中には巨大な両手剣を携えている。奈央の身長と同じぐらいの長さがある。
「何だ貴様は? なぜここに来た?」
タローマティは背中の剣に手をかけながら今にも斬りかからんといった感じで奈央に尋ねる。
「サタンミリティアの者よ」
それを聞くとタローマティは剣を抜いた。
「私を殺しに来たってわけか」
「話を聞くだけよ」
奈央は嘘を付いた。本当は抹殺命令が出ているのだが、油断させようと話を聞くだけだと言った。タローマティは不審に思っているようだったが、しぶしぶ奈央の言うとおりにした。2人は小屋の中にあった椅子に腰掛けてテーブル越しに話し始める。
「とりあえず人間の姿にならない? その格好じゃ話しづらいでしょ」
タローマティは何も言わない。
「そうだ、お腹すいてるんじゃない?」
奈央はバッグから固形プラーナを取り出した。悪魔はこれでエネルギーを補給するのである。タローマティは身を乗り出すとゴクッと生唾を飲んだ。

タローマティは固形プラーナを受け取ると大人しく人間の姿に戻り、ポツポツと話し始めた。
「……あの年を取った男の人間が、立ち会いを所望してきた」
タローマティは俯いたまま話している。
「立ち会い?」
「剣の立ち会いだ。私も魔法を使わず正々堂々と剣のみで戦い勝った。それだけだ」
奈央はロングヘアをくるくるいじりながら尋ねる。
「どんな勝負だったの?」
「私とその老人は対峙した。その老人からは凄まじい殺気が放たれていた。私もその老人も互いに動けず、どれだけかわからんが、長い時間が経った」
奈央はタローマティに攻撃を仕掛けるタイミングを伺っている。
「最初に仕掛けたのは老人のほうだった。一気に踏み込むと、居合で私に斬りつけてきた。私はその動きに感心した。一点のムダもない美しい居合だった。恐らく人間では最高クラスの剣捌きだろう。私は老人の剣が私に触れる前に剣を横薙ぎに振りぬき、老人を真っ二つにした。いい勝負だった」
タローマティは少し上を向いて、嬉しそうな切なそうなそんな表情をした。
「なんで勝負をすることになったの?」
「私が森で剣を振っているのをこの辺の住人が目撃したらしい。それで化け物が居ると噂になったそうだ。そこで老人が来て、自分が立ち会うから他の人間には手を出さないでくれと」
「それで?」
「私はあの老人を尊敬した。力では私にかなわないとわかっていて私に挑んだのだ。住人を守るために。とても立派な誇り高い剣士だった」
奈央は黙ってタローマティを見ている。
「私はあの老人との約束を守ろうと思う。金輪際、人間には手を出さない」
奈央が両手に炎拳を発動し、攻撃しようとした、その時、小屋のドアが勢い良く開いた。
「警察だ!! 2人とも動くな!!」
そう叫びながら数人の警官が拳銃を構えて入ってきた。ゆっくりと手を上げる奈央とターロマティ。こうして2人は警察に逮捕された。

殺風景な取調室。狭い部屋の中には机を挟んで向かい合わせの椅子が2つ。机の上には電気スタンド。窓には鉄格子が嵌められている。奈央の向かいには2人の刑事。1人が椅子に腰掛けている。
「名前は?」
「秋月奈央。27歳。彼氏募集中」
刑事はすらすらと調書に書く。
「職業は?」
「株式会社サタンミリティアの契約社員」
「株式会社……。サタンミリティアと。これは何の会社だ?」
奈央は髪の毛をいじりながら答える。
「単なる警備会社よ。私はそこの警備員」
刑事は調書に書いている。
「廃屋の近くに置いてあったフェラーリ。あれはお前の車か?」
「そうだけど?」
「単なる警備員がどうやってあんなもん買った?」
「うちの会社、給料いいのよ。会社に問い合わせてみたら?」
「いくら貰ってる?」
「契約金が8000万。賃金が年に1200万」
「嘘ばっかりつくな!!」
隣で立っていた刑事が両手で机をバンと叩く。
「どうせ違法な手段で儲けたんだろうが!! ああ!?」
「会社か税務署に問い合わせてみてよ。本当だってわかるから」
刑事は釈然としてない感じだったが一応調書に書いている。
「あそこで何をしていた?」
刑事は睨みつけながら尋ねる。
「話をしてただけだけど」
「殺人犯と呑気にお話か?」
奈央は鼻で笑う。
「殺人犯だなんて知らなかったのよ」
「あいつとはどんな関係だ?」
「赤の他人よ。たまたまハイキングの途中で会って、話してただけ」
「ふざけるな!!」
隣で立っていた刑事が刑事は机をガンと蹴りあげる。
「ハイキングの途中、赤の他人と、廃屋で話すやつがどこにいるんだ!!」
その時、取調室のドアが開き、上司らしき人物が入ってきた。
「杉原、取り調べは終わりだ。すぐにその方を釈放しろ」
2人の刑事は顔を見合わせた。
「だってこいつは被疑者と一緒に居た重要参考人で……」
杉原と呼ばれた刑事が抗議するが上司は首を横にふる。
「上から指示があったんだよ。すぐに釈放しろと」
杉原はイライラした様子で後ろ頭を掻きむしると奈央と椅子を繋いでいた紐を外した。
「じゃあね~。刑事さん」
奈央は睨みつける杉原を尻目に取調室を出て行こうとする。
「あ、そういや刑事さん」
「なんだ」
杉原は憮然として返事をする。
「あいつの現場検証っていつなの?」
「明日だよ。それがどうした?」
「別に」
こうして奈央は晴れて釈放された。

その日の夜。Bar Satanにて、奈央と沢村が話している。
「遅いわよ、助けるのがさー」
奈央はむくれてオレンジジュースを飲む。
「仕方ないでしょ。上まで情報が行って警察に掛け合うのに時間かかるんだから」
沢村はウィスキーを飲んでいる。
「でも、警察に捕まったとなるともう無理かしらね」
沢村はため息をついた。
「いや、諦めるのはまだ早いわよ」
「え?」
「会員規約ってさ、コントラクターが業務遂行のために人間に危害を加えるの確かオッケーだったよね?」
「……程度によるけどね。殺したりするのはもちろんダメ。怪我をさせるのもダメ」
奈央はニヤリと笑った。
「あんた、何する気なの?」
「明日、あの山でタローマティの現場検証があるのよ。その場を襲撃してタローマティを殺る」
沢村は頭を抱えた。
「危険すぎるわよ。すり傷ひとつ負わせたらあんたクビよ」
「大丈夫だって。上手くやるから。500の仕事をみすみす逃してたまるか」
沢村は呆れた目で奈央を見た。

翌日早朝、奈央は車から足が付かないようにタクシーで現場へと向かった。現場は車でも入れる山中の舗装路である。そして茂みで黒ずくめの服に着替える。服とリュックはビニールに入れて、葉っぱをかけて隠した。そして、警察が来ないかどうか木陰からじっと張り込む。
昼ごろ、現場検証のいち団は来た。15人。いや、16人の警官が居る。タローマティは居ない。おそらく護送車の中に居るのだろう。

奈央は黒い覆面をかぶると、警察のいち団を襲撃した。慌てて大混乱におちいる警官たちを1人ずつ順番に倒していく。漫画などでよくある延髄に手刀を浴びせて気絶させるあれである。これは急所である延髄に打撃を与えるものであるので、力加減を間違えると死ぬ危険な技であった。奈央は後遺症が残らずしかし気絶させる絶妙な力加減で、素早く警官たちを倒していく。
「動くな!」
後ろを振り向くと、そこには杉原が拳銃を構えて立っていた。
「ゆっくり手を上げろ。動くと撃つぞ」
だが奈央はゆっくり歩きながら杉原のほうに近づく。杉原は上空に向けて威嚇射撃をした。だが奈央は止まらない。ついに杉原は奈央の太ももを狙って発砲した。だが奈央は飛び上がってそれをかわす。杉原は目を丸くした。拳銃を避けられた経験などもちろん無い。次の瞬間、杉原は延髄に衝撃を受け、気絶してしまった。

奈央は護送車の扉を勢い良く開け、タローマティを引きずりだした。そして、大外刈りで地面に倒すと、顔面に爪状の炎刃が突き出た拳を叩き込んだ。だが、タローマティは奈央の腕を取ってそれを防ぐ。次の瞬間、タローマティはまばゆいピンク色の光を発すると悪魔の姿に変身した。ジャンプして間合いを取る奈央。タローマティは剣を抜くと雄叫びをあげて奈央に斬りかかってきた。巨大な剣を上段に振り構えて突進する様はまるで獅子の如き威圧感があった。タローマティは奈央のところまで間合いを詰めると思い切り剣を振り下ろした。奈央はそれを避けたが、その後の光景を見て戦慄した。振り下ろされた剣がすさまじい轟音を立てて舗装された道路を叩き割ったのである。それは耳をつんざくまるで大砲の音を間近で聞いたようなすさまじい轟音であった。耳がキーンとして痛い。タローマティは今度は剣を横に振りかぶると思いきり奈央の胴体めがけて横薙ぎに振りぬいた。ブウンという重い風切音がする。奈央はそれをジャンプでかわして間合いを取ると右手に雷拳を発動した。タローマティはまた雄叫びをあげながら上段に剣を構え、奈央に突進してくる。その瞬間、奈央は正拳突きの要領で雷拳を前に突き出した。すると奈央の拳から稲妻がほどばしり、タローマティの胸を貫いた。雷心閃動殺。ラボラスを倒した技である。タローマティは断末魔の叫び声をあげ、剣を手放して膝から崩れ落ちた。その瞬間、奈央は内回し炎刃蹴りでタローマティの首を撥ねた。

奈央はしばらくタローマティの死体を眺めていた。死んだのを確認するためである。しばらくするとタローマティの死体からブスブスと煙が上がり始め、30秒ほどで死体が全て灰になってしまった。悪魔は死ぬとこうなるのである。奈央は死んだのを確認すると服を隠した場所に向かって歩き始めた。

「秋月!」

呼び止められて固まる奈央。しかし振り向かない。振り向いたら奈央だとわかるからである。声の調子からして呼び止めたのは杉原である。
「このまま済むと思うなよ」
奈央はその言葉に特に反応せず、再び歩き出した。

その夜、Bar Satanにて。
「んで、その杉原って刑事はどんな男なの?」
沢村はカクテルを飲みながら奈央に尋ねた。
「大した男じゃないわよ。髪ボサボサで無精ひげ生やしててきったないの」
「へー」
「それより、これでちゃんと報酬はもらえるんでしょうね?」
「今回の事件に関してあんたの働きは予想以上だったから、報酬は100から150に上げるって上から言われたわよ」
「マジで!? やった! 2日間で150万! くぅ~、転職してよかった」
「それから、これで来年度あんたの固定給が落ちることは無さそうよ」
「わーい! やったー!」
奈央は大喜びでウィスキーを飲み干した。
「あんまり飲み過ぎないのよ。明日も依頼来るかもしれないんだから」
「マスター、ラフロイグのロック追加ね」

こうして奈央は会社から一人前のコントラクターとして認められることになった。

⇒第13話を読む

作者コメント

杉原は再登場します。