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【小説】魔神系非モテ女子の戦い・第13話

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第13話 絶体絶命!(前編)

パズズは背後から物凄いスピードで近づき、奈央に向けて短刀の一撃を繰り出した。奈央は宙返りをしてそれをかわすと横炎刃蹴りを繰り出す。パズズは素早くそれをかわし、空中に飛び上がって奈央と間合いを取る。次にパズズは奈央に近づきながら衝撃波を繰り出した。奈央は飛び上がって衝撃波を避けると手から炎刃を出し、パズズを斬り付ける。パズズは素早く間合いを取ってそれをかわすと着地した奈央の上空から再び近づく。奈央は振り返って炎刃をブンと振ると炎刃が鞭状に長くなり、近づいてくるパズズを弾いた。地面に落ち、膝をつくパズズ。

「お見事ですアスラさん。また新しい技を開発したんですね」
「へへー、炎鞭って言うの」
奈央は炎の鞭で地面をピシッと弾いてみせた。
「あと、見て見て。これ。最近覚えたの」
そう言うと奈央は空中に浮かんでみせた。
「おー、飛空魔法ですか。これで戦闘の幅が広がりますね」

ここはサタンミリティアの訓練場。都内西部の山中に人知れず存在するのだ。広さは小さい野球場ぐらい。悪魔の攻撃にも耐えれるように特注したサンドバッグやダミー人形が端のほうにたくさんあり、悪魔たちが思い思いに訓練をしている。真ん中は試合場で、実践訓練を行っている悪魔たちがたくさんいる。奈央はここが使えるようになって山ごもりをしなくて良くなったので非常に楽になった。

「じゃあ、これバイト代ね」
「へへ、まいどあり」
パズズに3万円を渡す。訓練の相手をするバイトである。その後、奈央は施設内にあるシャワーで汗を流してロビーにあるソファーに腰掛け、プラーナ入りのスポーツドリンクを飲んでいた。自販機から無料で貰えるのだ。
(ほんと至れり尽くせりだわ)
そんなことを思いながら備え付けの液晶テレビを見ているとLINEの呼び出し音が鳴った。送信主を見ると沢村である。

「はいはーい、何? 仕事?」
“そうよ。今すぐサタンに来れる?”
「あー、いま訓練場にいるのよね。渋谷まで2時間ぐらいかかるけど」
“じゃあ、いいわ。このまま簡単に説明するから”
「はいはい」
“今回は2000万円の大仕事よ”
「に、2000万!?」
“そう。悪魔が消えたのよ”
「それが2000万?」
“被害者が多すぎるのよ。既に100人以上が同じ場所でいなくなってるの”
「んで? ターゲットの場所は?」
“山梨にある不満寺っていうお寺よ。今回はラボラスとコンビで行ってもらうから”
「ええーっ、なんでアイツなの?」
“あんたとは顔見知りだし、お互いの能力もよく知ってるでしょ。すぐそっちに飛んで行かせるから着いたらあんたの車で現場に向かって”
「はぁーい……」

30分ほどそのままソファーでうつらうつらとして、夢うつつになったころ、
「おい、のんきに寝てんじゃねえよ日照り女」
野太い男の声がする。奈央が目を覚ますと、金髪オールバックにサングラス、真っ赤で派手な模様のついたシャツを着たガラの悪い男が立っている。ラボラスである。
「ふわ~あ、じゃあ行きますか」
奈央は大きく伸びをした。

「お前ら人間の生活ってのもいいもんだな」
ラボラスは車の窓を見ながらニヤけて言う。
「特にこのミリティアって会社は実にいい。好きなように悪魔をぶっ殺して金まで貰えるんだからな。毎日、犬缶食べ放題だ」
ラボラスはゲッゲッと笑う。奈央は無視して車を運転している。
「おい、ちょっとコンビニに寄ってくれ」
「なに? おしっこ?」
「30分も飛んで腹が減ったから犬缶買うんだよ」
「ちょっと、やめてよ。車が臭くなるじゃない」
「いいから寄れ」

奈央はしぶしぶ近くにあったコンビニに車を停めた。車を降りてドリップコーヒのカップを買い、コーヒーメーカーにセットしてドリップされるのを待っていると、店内にいる子どもの声が聞こえてきた。
「こないだ陣場山に行ったとき火の鳥を見たんだよー」
「うっそだー、そんなのいるわけないよー」
「本当だって! 喋るんだよ。山梨にある不満寺に行ったらダメだとか言うんだ」
それを聞いた奈央とラボラスの目が鋭く光る。
「確かフェネクスってあんたの仲間だったよね?」
「ああ」
「いまどこにいんの?」
「わからん。だが陣場山にいてもおかしくはない」
フェネクスとはソロモン72柱の悪魔の1人で、俗にいうフェニックスである。

奈央たちは子どもの言った、不満寺に行くな、というのがどういうことなのか確かめるため、先に陣場山へ向かうことにした。幸いにも奈央たちは陣場山から近い場所にいたため、15分ほどで着いた。山頂に近い和田峠まで車で行き、そこから山頂を目指す。そこは普通のハイキングコースでハイカーたちが楽しそうに歩いている。
「人間ってのは妙な生き物だな。山を歩きまわるのがそんなに楽しいのか」
奈央はラボラスを無視して歩いているハイカーに声をかけた。火の鳥がいなかったか、と聞いたが不審者扱いされて無視された。奈央は次々に聞いていくがみんな笑うか不審がるかで、特段の反応はない。だが5回目に聞いたカップルは今までとは違う反応を示した。
「すみません。このへんで燃えてる鳥見ませんでした?」
カップルは驚いて顔を見合わせる。
「見ました。奈良子峠のあたりで見たんです。とっさに写真も撮ったんですよ。さっきツイッターに上げたんです。そしたらリツイートがすごくて」
奈央はスマホでツイッターを開き、”火の鳥”で検索してみた。最初に出て来たツイートを開くと山林の上を優雅に飛ぶ燃え盛る鳥が写っている。
「間違いない。フェネクスだ」
隣で見ていたラボラスが言う。奈央たちは山頂を通りすぎて奈良子峠へ急いだ。奈良子峠は山頂から30分ほど下ったところにある。奈良子峠へ着いたが何もいない。ひと通り辺りを見回してみたが特段何かいる気配はない。
「あんた飛んで探してきてくれない? 私は森の中を探すから」
奈央がラボラスに言う。
「仕方ねえな」
ラボラスはまばゆい光を発すると羽の生えた犬の姿に変身し、そらに飛び立った。奈央はハイキングコースから森の中に入り、探しまわるが何もいない。しばらくすると、ラボラスが戻ってきた。
「居たぞ。向こうの岩山の上にいる」
奈央は飛空魔法を使って飛び立つとラボラスの言った岩山へ行く。

岩山の頂に確かに鳥はとまっていた。真っ赤に燃え盛る体、そして羽。だが目は恐ろしいほど冷たい。奈央とラボラスは岩山に降り立つとフェネクスと対峙する。
「その女は?」
フェネクスはラボラスに尋ねる。
「こいつは妖怪日照り女。油断してると食われるぞ」
奈央はラボラスを蹴飛ばすと、フェネクスに答えた。
「魔神アスラよ。それより、あなた色んな通行人に不満寺に行くなって言ってるらしいわね」
「色んな通行人には警告しとらん。悪魔にだけだ」
奈央は一瞬黙ったが、続けて畳み掛ける。
「どういうこと? 不満時に行くなって」
「あそこにいるのはバフォメットだ。バフォメットが多くの悪魔を消し去っている」
奈央は目を細くする。
「それは知ってるわ。だから不満時に奴を退治しに行くんだけど?」
フェネクスは上を見上げ、目をつぶって言う。
「……お前らでは勝てん」
「何言ってんだ? バフォメットなんかそんな大したことねえじゃねえか」
ラボラスは岩場に寝そべってへっへッヘッと舌を出して息をしている。
「お前らも知っていようが、奴は召喚術を使う。今回、奴が契約した悪魔が問題だ。とんでもない奴を呼び出してくる」
「いったい誰を呼び出すっていうの?」
「……アチャラナータだ」
それを聞いた2人は絶句した。シヴァの眷属である高位の神である。
「なんでそんなものすごい奴をたかがバフォメットが呼び出せるの!?」
「わからん。だが、奴のうしろにはアチャラナータがついているということだ。悪いことは言わん。引き返せ」
フェネクスはそれだけ言うと飛び立ち、どこかへ行ってしまった。その後、2人はしばらく呆然と立っていた。
「……おい、どうすんだよ。行くのか?」
ラボラスは横目で奈央を見ながら尋ねる。
「……何もせずに帰るわけにはいかないわよ。せめて本当にアチャラナータがいるかどうかぐらいは確かめないと」
奈央の表情は厳しい。本当にアチャラナータがいれば死ぬ危険が高い。

2人は山を降りると不安を抱きながら山梨へと車を飛ばした。

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作者コメント

次回、アチャラナータは本当にいるのか? お楽しみに。